「よく聞こえるスマホ」はこうして生まれた 米国で大躍進、京セラ革新技術の開発秘話

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しかし、青くなったのは本社に戻ってからだ。聞き違いがないか書類を確認してみると、聞いたはずの仕様と違う。急遽、電話で話した商談先に頭を下げ、再確認を取って事なきを得た。冷や汗が背中をぬらした。

「音を振動に変えたらいい」

電池を長持ちさせるため、スマホの機構部品は小さければ小さいほどよいとされる。レシーバーも例外ではなく、小さな穴に凝縮された。その結果、少しでも耳がレシーバーからずれると聞こえないという弊害が生じた。

「スマホといえど、電話なんやから聞こえてなんぼのはず。いろんな機能がついていて便利だが、最も大切な機能に不足があってええんやろか」。大槻は考え始めた。

そんな時、たまたま、とある医科大学で聴覚を専門に研究している耳鼻咽喉科の医師を訪ねる機会があった。何気ない会話の中でふと、その医師が「音が聞こえるには気導音(空気振動で伝わる音)も大切だが、骨導音(頭蓋骨から伝わる音)も重要」と漏らした。大槻は敏感に反応した。「そうか、音を振動に変えればええんや」。

会社に戻った大槻は早速、自社の総合研究所に音を振動に変換できるような部材がないか、問い合わせた。すると、打てば響くように「この部材なら行けるのでは」と、小型セラミック素子が提案されてきた。そこで、機能概要を横浜にある自社の通信端末を作っている通信事業部や顧客であるKDDIに紹介し、反応を探った。

紹介して初めてわかったのは、KDDIにもやはり、消費者から「スマホは音が聞こえにくい」というクレームが相当数届いているということだった。

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