若者が理解しない「よく怒鳴る上司」の真の意図

社会人が覚えておきたい「正しい怒り方」

その分析もしないで、ただ怒っている上司は面倒だとか、嫌だとかと決めつけるのはあまりにも短絡的で幼い。まず怒っている相手をよく見て、どの種類の怒りなのかを判断することが肝要です。

実は私が外務省にいた頃の首席事務官(外務省独自の役職でほかの中央省庁では筆頭課長補佐にあたる)に、まさに瞬間湯沸かし器のような人がいました。とにかくよく怒鳴る。外務省に研修生として働きだしたばかりの頃ですから怖かった。研修生だけじゃなく、部下のほとんどが彼のことを蛇蝎のごとく嫌っていたのです。

ところがあるとき気がついたんです。その上司の怒りにはある一定の法則がある。首席事務官が鬼のように怒鳴るときは、たいていその上の課長が課員に対して何か不満を持っているときなのです。あるいは課員がミスをしたとき。課長が怒る前にその首席事務官が怒鳴る。その勢いが激しいものだから、課長は「まぁまぁ」となる。

結局、蛇蝎のごとく嫌われていたその首席事務官のおかげで、課員は課長から直接怒られたりとがめられたりすることはほとんどなかったし、課長のほうも課員にきつく当たる必要がなかった。自ら悪役になって、課の防波堤になっていたわけです。

「上司のホンネ」が垣間見えたとき

そのカラクリ、戦略が見えてきてからは、その首席事務官が瞬間湯沸かし器的に怒鳴ろうが私は少しも怖くなかった。むしろ親近感を覚えました。

研修生だったある朝、睡眠時間3時間とか徹夜とかが続いていたときですが、その首席事務官が来て「佐藤、飯を食いに行こう」というのです。

当時外務省の8階にはグリーンハウスという喫茶店があって、そこでサンドイッチを食べコーヒーを飲みながら、その首席事務官が「どうだ、つらいか?」と聞くのです。

「大学院で研究をしていた学生が急にこんなガサツでバタバタしたところに来て、外務省がこんなとこだと思わなかったろ」と。「でも絶対にいま辞めるなよ。いまはこき使われてるけど、研修が終わればまた違ってくる。短気を起こして辞めるんじゃないぞ」というのです。

それまでは怒鳴り声ばかりのイメージでしたから、突然のしんみりした言葉にびっくりしつつ、「いえ、私はこの仕事は面白いと思っています」と答えると、「そうか、本当に一生懸命やってくれてありがとう。今日はもう帰って寝ろ、疲れてるだろう」。それでその上司は残ってまた仕事を続ける。

私はやっぱりこの人は、冷静に状況や人を見て行動している人だと思いました。周りはいまだに厄介な人物だと思っているかもしれませんが、おそらく彼からしたら、私が何となくわかっていそうだと察して、本当の自分を種明かししてくれたのかもしれません。

実は後日談があって、その後何年もたって私が鈴木宗男事件で騒がれているとき、外務省の廊下でその元上司とすれ違ったのです。

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