若者が理解しない「よく怒鳴る上司」の真の意図 社会人が覚えておきたい「正しい怒り方」

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彼は某大国の大使に出世して日本に帰ってきていましたが、そのとき、すれ違い際にポンと肩を叩いて、「おう佐藤、ちょっとやりすぎたな。しばらくおとなしくしとけ。君がちゃんと仕事をしているのは俺がいちばんよく知っているから」と言ってくれたのです。

当時は内外からのバッシングを受けていたときだけに、その言葉にはとても助けられました。ちゃんと見ていてくれる人がいる。それは本当にありがたく貴重でした。

すぐに怒る、怒鳴るからといって、厄介な人だとかおかしな人だとか決めつけないほうがいい。本当にすばらしい上司というのは、意外にそういう人の中にいたりするものです。

立場が弱い人間を怒ってはいけない

最後に。中間管理職になって人を教える立場に立ったら、時には戦略的に怒ることも必要です。ですが、まだ人を教えたり育てたりする責任を負わされていない若い人は、基本的に怒らないこと。これを心に留めておいてください。

若いうちは怒り方よりもむしろ怒られ方を学ぶべきです。それが後々、自分が下の人間を叱ったり、怒ったりするときに役に立つはずです。

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そもそも若いうちからいろんなことで怒ったり大声をあげていると、情緒不安定者と見られます。いま会社の中でいちばんきついレッテルが「あいつは情緒不安定だから」というもの。そうなると仕事の能力以前に、人格的に問題があると見なされる。当然主要な部署からは外されていくでしょう。

ケースバイケースとはいえ、怒って大きな声をあげるのは1年に1回あるかないか、くらいがちょうどいいでしょう。最も避けるべきは、自分の立場を盾にして自分より弱い立場の人間に怒りをぶつけること。例えば出入りの業者であるとか、派遣できている人とか、そういう立場の弱い人に自分の立場の強さを背景に怒るのは絶対に避けるべきです。

どんなに理屈が通っていて自分が正しくても、完全に自分のほうが立場が上だとしたら、いじめているように受けとられかねません。いわゆるパワハラ的なことに対する意識が最近は高いですから、気をつけたほうがいいでしょう。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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