3年目の苦戦「トランプ一般教書」3つの注目点 経済や中国についてどんな発言をするか

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一般教書演説は、スカスカなままの政策メニューを点検する数少ない機会である。政府閉鎖の余波で、通常であれば2月の第一月曜日までに発表される予算教書も、今年は発表が遅れる見込みである。今回の演説の機会を逃せば、トランプ政権の政策メニューが明らかになる機会は、しばらく訪れない。

ここでも注目されるのは、民主党との距離感である。記者団に事前ブリーフィングを行った政権関係者は、トランプ大統領は「2大政党が協力できる論点を提示する」と述べている。実際に、インフラ投資や薬価の抑制など、大まかな方向性においては、トランプ大統領と民主党の意見が一致している課題はある。また、中間選挙でトランプ大統領が提案した中間層減税でも、提案の組み立て方によっては、民主党の賛成を得られる余地がある。

民主党との距離感を詰められるかどうかは、具体的な提案の内容に左右される。例えばインフラ投資では、州政府や民間の資金に期待するトランプ大統領に対し、民主党は連邦政府による財政負担の大幅増を考えている。中間層減税については、トランプ政権の提案が2017年に行われた減税の延長線上にあるとすれば、その恩恵は富裕層に広がる可能性がある。民主党としては容認できない展開だが、具体的な提案の内容が一切明らかになっていない現状では、協力を模索する手がかりがない。

中国に対してどんな発言をするか

具体的な提案が、民主党との対立を深める方向に働く可能性もある。とくに来年度の予算に関しては、教育や弱者対策等の民主党が重視する分野において、トランプ大統領が大幅な歳出削減を提案するかもしれない。そうした提案が行われた暁には、債務上限の引き上げなどの財政に関する交渉は難易度が増す。

最後の注目点は、経済に対するメッセージである。ねじれ議会における初めての演説というだけでなく、アメリカ経済の先行きに対する不安が高まっているという意味でも、一般教書演説を取り巻く環境は、昨年とは様変わりしている。株式市場等は、FRB(連邦準備理事会)が金融政策の引き締め姿勢を後退させたことを好感しているが、一般教書演説においても、トランプ大統領が市場を安心させるメッセージを送れるかどうかが注目される。

焦点となるのは、景気の大きな不安材料となっている通商政策である。とくに中国との交渉については、いよいよ佳境を迎える中での演説となる。

トランプ大統領の発言はもちろんだが、興味深いのは、演説を聞いている議員の反応だ。最近のアメリカでは、こと中国に関しては、トランプ大統領のみならず、議員の間でも、強硬な言動が目立つ。トランプ大統領が貿易面での勝利を優先して交渉をまとめようとした場合には、知的財産権の保護等の構造的な論点での進捗不足を理由に、議会から不満の声が噴出するかもしれない。

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