当然のことながら、守りの運用ではそれ以前の上昇トレンドのときのような大きな利益を得ることはできません。しかし相場には必ず波というものがあるので「それでも十分だ」と余裕を持って臨むことが肝要です。悪い波がやってきているときには、それまでの利益をできるだけ減らさないという意識を持つことのほうが、私はずっと重要であると思っています。
そのような考え方が、次の積極的な投資をしたい局面が来たときに、大きなリターンをもたらすことに直結するはずだからです。まさに2019~2020年はそういった局面が訪れる年になるのではないでしょうか。
そうはいっても、2019年前半の相場は方向性が見えづらい展開になっています。というのも、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が年明け1月4日の講演で、「市場は世界景気を不安視しており、金融政策も柔軟に見直す用意がある」と述べ、今後の政策運営は株価を見ながら慎重に進めるという考えを示したからです。
パウエル議長は2018年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、「アメリカ経済は力強く、2019年も2回の利上げが正当化される」と強調したばかりだったのですが、わずか2週間後にはアメリカ株の暴落を受けて、2019年中は利上げを停止する可能性を示唆せざるをえなかったというわけです。
長期金利下落は大幅な景気減速を先送りする効果
今、私が景気減速の最大の要因と捉えているアメリカの長期金利は上昇から低下へと転じてきています。2018年11月初めの時点で3.2%台を付けていた長期金利は、現在では2.7%台まで低下してきているのです。
国際金融協会の調査によれば、政府と民間が抱える世界の合計債務は2018年3月時点で247兆ドル(1ドル109円で換算すると約2京7000兆円)と、サブプライムショックが起こった2007年に比べて1.7倍にも増えてしまっています。その増え方に連動するように、合計債務の対GDP比率は2007年には275%程度だったのですが、たった10年あまりしか経っていない2018年には何と320%に迫るまで膨らんできてしまっているわけです。
今でも経済的な常識では、「長期金利は経済の体温」といわれています。本来であれば、景気が拡大すれば金利が上昇するのは好感されるはずです。ところが、長いあいだ低金利に過度に依存してきた金融市場にとって、金利上昇は劇薬以外の何物でもありません。というのも、金利上昇によって政府や企業、家計は借金の負担が重くなり、経済や株価に悪影響をもたらすことが避けられないからです。そういった意味では、金利の低下は大幅な景気減速をある程度は先送りする効果を発揮することができるでしょう。
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