沖縄の彼女が波風立てても世に伝えたいこと 分断の歴史、葛藤の島でもがく若者たち(1)
この思いをFacebookに投稿するかどうか、迷った。
沖縄の若者たちの間で基地問題に触れることは、いわばタブーだ。基地で働く人もいれば、土地収入を得ている人や米兵と結婚した人だっている。もちろん基地に賛成している人だっている。彼女の親戚も米軍人と結婚した。基地問題について何か言葉を発せば誰かを傷つけるし、友だちとも気まずくなる。その問題に触れさえしなければ、人間関係に波風は立たず、何より自分が楽だ。それが沖縄の若者の処世術でもあると彼女は思う。だから、投稿は「掟(おきて)」を打ち破ることになる。
何人かの友人がFacebookに投稿をしているのを見た。でも、自分が投稿するのは、やはり怖い。これまでも政治的な投稿をしたことがないし、無用な反発を招きはしないか。でも、関心が集まっている今、書いておかないと後悔しそうな気がする。心は乱れ、堂々巡りに陥る。
それでも基地と向かい合うことの苦しみを、なんとか伝えたい。同じように苦しんでいる人たちだけでなく、努めて無関心を装っている若い人たち、諦めてしまっている人たち、それに基地を容認する人たちにも、「みんな苦しいよね」って、心の扉を叩いてみたいから。
12月16日の夜、自分の部屋でスマホに向かった。「基地」とか「米兵」「民意」など、硬いフレーズは柔らかい言葉に置き換える。真意が伝わらないし、誰かを批判することになりかねない。こと基地問題に関しては、この島に加害者はいないと思っているから、誰かをターゲットにはしたくない。
スマホで書き始めると、涙が止まらなくなった
書き始めてはみたが、スマホのキーボードを操る指先が何度も止まった。この島で生活する人たちが、自分ではないだれかのために、どれだけ涙を流してきただろう。それを思うと、涙が止まらなくなった。
2時間ほどで書き上げた文章をFacebookに投稿した。
この島で生きる人たちはとっても優しくて、
とってもあたたかくて、とっても強い。
未来の沖縄を生きるみんなをまもりたい。
どんなにその思いが踏みにじられようとも
歯を食いしばって闘ってきた。
どれだけの人が沖縄のために
自分ではない誰かのために
たくさんの涙を流してきたのだろう。
どうしてこの思いが届かないんだろう、
くやしくって かなしくって たまらない。
誰も望んでないのに
どうして外からやってきたものによって
対立させられなきゃいけないんだろう。
対立なんて誰も望んではいないこと。
誰かを傷つけたくて
傷つけている人なんていないこと。
誰かを傷つけることで
自分も傷ついていること。
ただしあわせになりたいだけ。
平和をつくるための知恵だって術だって
ちゃんと持っているはず。
本当に大切なものはなんだろう。
本当にまもりたいものはなんだろう。
みんなにとってのしあわせってなんだろう。
しっかり見つめ直したい。
もう誰かが傷ついているのをみたくない。
ただそれだけ。
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