アメリカの中国への「認識」は180度変わった

貿易戦争は米中対立における氷山の一角

認識の変化は、政界のみならず、アメリカのビジネス界にも広がっている。自社製品やサービスを中国で販売し、さらに中国で製造することを望んでいたアメリカ企業は、つい最近までは中国に対して厳しい措置をとることを求めていたアメリカの政治家に難色を示していた。

ところが、中国市場への参入障壁や技術・知的財産の盗用、外国企業にとって有害な法律や規制の変更など多数の問題により、アメリカのビジネスリーダーの多くがアメリカ政府の中国に対する厳しい対応を公然と支持するようになった。そして、研究者を含むアメリカの知的コミュニティーも、言論の自由、学問の自由、市民社会を、中国国外でさえも抑圧しようとする中国政府の取り組みに警戒するようになっている。

さらに、アメリカにおけるこうした認識の変化は、世界中でその影響力を拡大しようとする中国の試みに対して、世界的な傾向として広まりつつある。この問題がアメリカに限定されていないことは、上記のフーバー研究所の調査からもわかる。同調査にはアメリカ以外に10名の研究者が参加し、リポートにはオーストラリア、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、シンガポール、そしてASEANの国内政治に影響を与えようとしている中国の試みを調査した付録が含まれているのだ。

今後も3つの領域で緊張と対立が続く

この傾向が意味するのは、米中間の現在の緊張と対立は、今後も3つの領域で続いてゆくということである。1つ目は貿易である。これは最も対処が簡単な問題だ。中国がアメリカからより多くの製品を購入することによって、改善の道筋が見えるからだ。これは、関税の引き下げ、輸入割当の排除、またはアメリカの製品やサービスの直接の購入によって実現できる。

中国政府がその経済において果たす中心的な役割を考えると、他国よりこうしたことを実施しやすい。中国がアメリカ製品の購入を増やすことによって、アメリカの生産者および政治家の中国に対する圧力を減らすことが可能になる。

さらに、中国がアメリカ製品をより多く購入することへの対応として、アメリカが中国製品に課している関税を引き下げる理由となる。長期的に見ると、現在の関税はアメリカの生産者と消費者への悪影響が増大する可能性があるからだ。そして、継続的な関税戦争はアメリカの株式市場に悪影響を与える。2019年または2020年の潜在的な景気後退の兆候として、すでに大規模な是正の兆し、そしておそらく大きな転落の兆しさえ見えている。

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