アメリカの中国への「認識」は180度変わった 貿易戦争は米中対立における氷山の一角

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加えて、貿易および貿易協定は取り引きであるため、トランプにも理解しやすく、有権者からの支持を得るために利用することは難しくない。これは、トランプが言うところの「勝利」と、米韓自由貿易協定と北米自由貿易協定の再交渉における実際の成果を比べれば明らかである。

2つ目は構造問題で、これは貿易より複雑だ。貿易は定量化が可能だ。たとえば、関税をどれだけ引き下げられるか、自動車の販売台数はどれくらいか、貿易の不均衡がどれだけ削減されたかなど測ることができる。一方、構造的問題は、特定、定量化、および修正がより難しい。特に中国のように多くが中央政府の管理下にない場合はなおさらだ。

構造問題の解決が持ち出される可能性低い

加えて、中国経済が主導する「中国製造2025」などの政策は、国の経済、技術、そして世界での競争力にとって不可欠であると考えられている。中国の指導者たちがそれを放棄することを期待するのは、ナイーブとしか言いようがない。

したがって、2国間交渉のために設定された2019年3月までの90日間で、これらの問題が完全に解決される可能性は低い。中間選挙終了によってトランプは選挙民へのアピールが不要になった一方で、民主党が召喚令状、公聴会審問、調査などを通じてトランプに攻勢を仕掛けている。こうした状況下で、トランプが米中関係において中国の構造問題を解決すべき問題として掲げる可能性は低いだろう。かわりに、米国通商代表(USTR)ロバート・ライトハイザーが、ある程度の結果を出すために、90日を超えても交渉を続けるようにトランプから求められるだろう。

3つ目に、貿易問題が部分的に解決し、構造問題についての交渉が継続されたとしても、中国が経済的、政治的、軍事的にアメリカに挑戦し続けることは間違いない。今後の課題唯一の疑問は、将来のアメリカの政権が、トランプ政権のアメリカ第1主義的アプローチや関税中心の取引的アプローチではなく、アメリカの同盟国およびパートナーとも効果的に協力し、より戦略的かつで、繊細で、長期的な中国政策を追求するかどうかということだ。

激化する米中対立に日本はどう対応するだろうか。日本はアメリカと中国が友好的になりすぎることを従来おそれてきた。なぜなら、これは日本を脇に置く「G-2」世界をもたらす可能性があるからだ。

一方、米中間の緊張は日本に悪影響を及ぼす可能性がある。日本は戦後のアメリカとの政治的・安全保障上の同盟関係と、貿易、投資、金融、観光などの分野でより依存度が増している中国との経済関係との間の微妙なバランスを、巧妙に取る必要がある。トランプ政権によって生み出された不確実性は、世界中の多くの国々に新しい友人を探し、リスクを回避する方法を見つけることを促している。日本と中国もその例外ではない。

グレン・S・フクシマ 米国先端政策研究所(CAP) 上級研究員

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Glen S. Fukushima

ワシントンD.C.のシンクタンク「米国先端政策研究所(CAP)」の上級研究員。カリフォルニア州出身で、アメリカ合衆国通商代表部で対日と対中を担当する代表補代理や在日米国商工会議所の会頭を務めた経歴を持つ。また、ハーバード大学の大学院生のときには、エドウィン・ライシャワー教授、エズラ・ヴォーゲル教授、デイヴィッド・リースマン教授の助手を務めた。

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