ECB、政策金利据え置きも再び利下げへ?  政策正常化遅延の公算、ユーロ安が進行

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 1月24日欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利を据え置いたほか、金利を少なくとも夏にかけて現在の記録的な低水準にとどめるとのガイダンスを維持した。昨年4月撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[フランクフルト 24日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は24日に開いた理事会で、主要政策金利を据え置いたほか、金利を少なくとも夏にかけて現在の記録的な低水準にとどめるとのガイダンスを維持した。ただドラギ総裁はユーロ圏の経済成長に対するリスクは下向きに移行したとの認識を表明。ECBの金融引き締めが遅延するだけでなく、再び利下げを実施するのではないかとの観測が台頭する可能性がある。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で「地政学的要因、保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性、金融市場のボラティリティーに関連する根強い不確実性により、ユーロ圏の成長見通しを巡るリスクは下向きに移行した」とし、「短期的な成長の勢いはこれまでの予想よりも弱くなる公算が大きい」と述べた。

ドラギ総裁の発言を受け、外国為替市場ではユーロが対ドルで一時1.1308ドルまで下落し、昨年12月17日以来の安値を更新した。

ドラギ総裁はリスク増大について言及したものの、現時点で政策を変更しない理由として、ユーロ圏では労働市場が力強さを増し、賃金も上昇していることから基調的なインフレが中期的に押し上げられるとの見方が出ていることなどを挙げた。

その上で「検証すべき主要なファクターは根強い不確実性となる」とし、英国の欧州連合(EU)離脱、中国経済の減速、保護貿易主義の台頭など多岐にわたる不確実性は対処されていると確信していると指摘。「理事会はこうしたすべてのリスク要因が信頼感に影響を及ぼしたかどうか、より多くの時間をかけて検証する。新たな成長見通しを発表する3月にさらに検証を進める」と述べた。

ドラギ総裁によると、今回の理事会では成長減速の認識と減速の要因について見解が一致。このほか、新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)について数人が言及したものの、今回の理事会では何も決定されなかったことも明らかにした。

これまで一部政策担当者は、リスク評価の変更はECBが何らかの政策措置を取るという観測につながる可能性があることから、変更は控えるべきとの考えを表明。ECBは昨年12月の理事会で2兆6000億ユーロ規模の量的緩和(QE)の終了という大きな決定を行ったばかりで、次の動きに踏み出す準備はまだできていないとの見方も出ていた。

政策措置を伴わないガイダンスの調整は、政策措置が政策担当者の経済の評価と一致していないとの見方につながる可能性がある。

ECBが今回の理事会で金利据え置きを決定したことで、リファイナンス金利は0.00%、中銀預金金利はマイナス0.40%にどまった。市場ではECBの最初の利上げは2020年半ばになるとの見方が出ている。

ドラギ総裁は市場の金利予測について、「市場はECBのフォワードガイダンスの付帯条件を踏まえ、2020年に利上げが開始されるとの予想を織り込んでおり、市場がECBの政策反応機能を理解していることを示している」と述べた。

ユーロ圏では3大経済国のドイツ、フランス、イタリアで18年第4・四半期の経済成長が軟調となった。ドラギ総裁はECBはドイツ、もしくはイタリアがリセッション(景気後退)に陥るとはみていないと述べたものの、同総裁が下向きリスクに言及したことは、ECBがこれまで示してきた楽観的な見解を取り下げ、米連邦準備理事会(FRB)のように慎重なスタンスに転じたことを示している。

INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼルスキ氏は、今回の理事会でECBは懸念を表明する中銀の仲間入りをしたと指摘。「成長に対する下向きリスクに言及したことは政策変更を示唆するものではないが、若干の緩和バイアスは示している」と述べた。

またピクテット・ウエルスマネジメントのエコノミスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「ECBは3月にTLTROの延長を発表する」との見方を示した。

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