「スプラトゥーン」の中毒性が極端に高い理由 家族の絆をも壊すその特殊なゲーム設計

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お金稼ぎやアイテムゲットには欠かせない「サーモンラン」や、各種マッチ(バトル)のスケジュールもスマホから確認できる。

ゲームデザインの視点からみると「見事」だが、ゲーム中毒の家族を抱える家庭からすると「悲劇」なゲームシステムなわけだ。

上記以外にもゲームプレーを有利にするために欠かせないアイテムを「膨大な時間」と引き換えに手に入れる仕組みは多数このゲームに存在している。

おとなしい子どもがゲーム機をたたきつけた

最後にもう1つ、「スプラトゥーン」によって壊れた家族の事例を紹介する。

当時小学6年生のミサさん(仮名)が「スプラトゥーン」を始めたのは2016年。めきめきと上達し、ランクはS。学校から帰ると夕飯を食べる間も惜しんで「スプラトゥーン」をやるようになった。
普段はまじめでおとなしいミサさんだったが、2016年夏のある晩、ネット対戦で味方に激高し、ゲーム機Wii Uを「わー!!」と叫びながらテーブルにたたきつけた。両親が強く注意すると、逆ギレして最後は自室にこもってしまった。父親は人格を変えるこのゲームに恐怖を感じ、スプラトゥーン禁止令を出した。

世界保健機関(WHO)は2018年6月にゲームに依存している状態を「ゲーム障害」という名前で、疾患として認めた。今年5月にものWHO総会で承認される予定だ。

各種依存症の特徴としては「依存対象との接触のコントロールができないこと」「依存対象に接触する強い欲求があること」が挙げられ、そして、それらが原因でトラブルを起こしても依存対象との接触がやめられない状況を指すと言われている。

そして、生活や仕事、家族よりも依存対象との接触を優先してしまう。「自力での依存症からの脱出は無理」で、専門家のカウンセリングや家族の協力が必要だとされている。

2018年9月のNintendo Switch Online有料化で、子どものプレーヤーは激減したといわれている。また、自動継続ではなく学業や家の手伝いなどを条件として、Nintendo Switch Onlineのプリペイドカードを親が与える形で、コントロールしている家庭もある。

だが、自分の収入からNintendo Switch Onlineのサービスを継続できる大人は、強制的な依存対象との接触遮断が訪れることもなく、今日もまた「スプラトゥーン2」との接触を続ける。

家族を「ゲーム脳」「オタク」「現実逃避」と切り捨てるのではなく、「中毒状態に家族が置かれており、1人では抜け出せない状態だ」と真剣に向き合い、治療をともに行うのが重要だ。

あなたが家族のゲーム依存で苦しんでいるときに、依存症に陥った家族もまた、誰かの救いを求めているのかもしれないのだから。

世永 玲生 GMOインターネット特命担当、ゲームデザイナー

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よなが れお / Reo Yonaga

ソニー・ミュージックエンタテインメント、セガ、キューエンターテインメントを経て2010年から現職。2009年に自身が企画した「Matrix Music Pad」がアップルの年間ベストアプリに選出されるなどの実績を持つ。英App Annieが選ぶ日本のTOP10デベロッパーに個人チームで唯一選出される。鈴木みそのマンガ「ナナのリテラシー」に登場する天才ITコンサルタント山田甚五郎のモデル。元ファミ通殿堂入りゲームデザイナーの視点からの各種分析記事には定評がある。※記事は筆者の個人的見解であり、所属組織を代表するものではありません

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