「スプラトゥーン」の中毒性が極端に高い理由 家族の絆をも壊すその特殊なゲーム設計

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筆者は、エビデンスが欠如している「ゲーム脳」という論調に加担するつもりはない。例えば、ヨーク大学のデジタルクリエイティビティラボでの研究では、MOBA(マルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ:複数のプレーヤーが2つのチームに分かれて戦うゲームのジャンル)のプレーヤーのパフォーマンスとIQの関係は、チェスのプレーヤーと非常に似た結果が出ている。

ニューヨーク・ロチェスター大学での研究では『コールオブデューティ』のプレーヤーは、一般的な平均よりも記憶力や集中力、マルチタスク能力などが勝るといった結果も出ている。

ゲームと一言でくくっても、熟語を思いついて並べるゲームや回路を作って自動化しロケットを打ち上げるゲーム、実際にコードをプログラミングして深センでバーチャル労働するゲームなども存在する。

実際に子どもの「教育」や「プログラミング的志向」に活用している家庭も多々存在し、「ゲーム」という一言で全部まとめて同等に扱うこと自体ナンセンスである。

つまり、「ゲーム脳」論は「本を読むとバカになる」と、ほぼ同意の暴論だと私は思っている。

そして、すばらしいゲームデザインがなされている「スプラトゥーン2」をけなす気ももちろん筆者にはない。だが、どのような構造が「中毒症状」を生んでいるかについてはゲームデザイナーという職業柄、興味を持たざるをえない。

中毒症状を引き起こす要因は4つある

筆者は「スプラトゥーン2」が中毒症状を引き起こす要因になっていると思うポイントは4つある。

1. 「クリア」という概念がない

さて、「スプラトゥーン2」のゲーム構造について簡単に述べさせてもらおうと思う。まず、特徴的な構造としては、課金が「買い切りシステム」であること、そして、イベントなどの仕組みは「ソシャゲ的」であることが挙げられる。

旧来の一般的なゲームは、「買い切り型」と呼ばれているゲームシステムになっており、一定のボリュームのゲームをすべてクリアして終了、という仕組みだ。つまり、ゲームを買った息子や旦那がゲームに夢中になっても、いずれは終わりがくるし、長時間ハマればハマるほどクリアまでの日数は急速にカウントダウンされていく。

ところが「スプラトゥーン2」は「買い切り型」のゲームでありながら、ソーシャルゲームのように、さまざまな新アイテムや新武器、イベントの追加が定期的に行われている。

つまり、スプラトゥーン2が運営が更新をやめない限り「プレーに終わり」がないのである。

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