スポーツに「情報の伝達力」が不可欠な理由 チームを強くするアナリティクスの可能性
ちなみに、というかこの文脈でこの話題を差し込むのは悪意と取られるかもしれないけれど(笑)、筆者がとあるスポーツ系のカンファレンスに出席した際に登壇者から聞いた話によると、西野JAPANは、このFIFAが用意したタブレットと分析用アプリケーションを活用していなかったそうだ。
つまり、この先アナリティクスのさらなる活用によって、日本代表はより進化する可能性がある、ということだ(と思いたい)。
「伝達力」が不可欠
日本においてスポーツアナリティクスにスポットが当たり始めたのは、およそ10年前のことだという。JSAA(一般社団法人日本スポーツアナリスト協会)によれば、「選手及びチームを目標達成に導くために、情報戦略面で高いレベルでの専門性を持ってサポートする」のが、スポーツアナリストという職業なのだという。そしてスポーツアナリストには、「情報収集」と「分析力」だけではなく、「伝達力」も不可欠だとされている。
確かに、データを迅速に“解析”できたとしても、それをコーチ、選手に“解釈”させられなければ、パフォーマンスに落とし込むことはできない。その意味でも、データの受け取り手を意識したUI/UXの構築は、スポーツアナリティクスにおいて必須であることはうなずける。
実際、海外のスポーツアナリティクスでは、いかにしてデータを理解してもらうかに大きな労力を割いている。
例えばドイツに本社を置くエンタープライズ系ソフトウェア企業のSAPは、サッカーのドイツ代表や複数のクラブチーム(FCバイエルン・ミュンヘンやホッケンハイム等)に対し、アナリティクス用のソリューションを提供しているが、選手ごとに見てほしい試合映像を小分けに編集し、マッサージルームやリラックスルームに置いた複数のタッチスクリーンでの閲覧を促している。
あるいは、戦術のタクティカルボードや解析した映像を、コミュニケーションツールを使って個人やグループ単位宛に送ることで、戦術的なメッセージを端的に、明確に伝える工夫を凝らしている。
これらのソリューションの肝は、選手に対し、いかにわかりやすくスカウティング/アナリティクスの意図を伝えるか、というコミュニケーションにおけるデザイン設計にあり、データは、あくまでその裏付けとして存在しているに過ぎないのだという。