人口減少で日本企業に「大合併」時代が訪れる 2060年までに、日本から「200万社」が消える

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これまでにもいろいろなところで主張しているように、日本は社会保障制度と国の借金を維持するために、生産性を高めなくてはいけません。そして、そのためには企業の規模の拡大が必須なのです。

人口減少の中で企業の規模を拡大させることは、企業の数が減ることを意味します。これから2060年までに、労働人口は3264万人減少します。減少率は実に42.5%にのぼります。これで、企業数が減らないはずがありません。

事実、現在の各企業の就業者数が変わらないと仮定し、所得の高い大企業から労働人口を優先的に配分していくと、2060年には、現在の30人未満の企業の約半分と、20人未満の企業のすべてで、雇用できる人材がいないことになります。私が「日本から200万社が消える」と言っている根拠はここにあります。

倒産・廃業でなく「合併」で規模拡大を

人が減る中で、企業の規模を拡大するためには、倒産や廃業を促すのではなく、可能な限り合併によって規模を拡大させるのが望ましい方法です。

人口も減るので、企業の数が減っても、雇用は減りません。この点は、人口が増加している時代とはまったく異なっています。人口が減少するという新しいパラダイムの時代を迎えているので、当然と言えば当然です。

合併して、無駄な仕事をなくし、人を無駄な仕事から解放して、もっと生産性の高い仕事をさせるべきなのです。

一般的には会社の数が減ると失業率が上昇すると言われていますが、それは勘違いです。こういうことを言っている人は、企業の数と雇用の数を勘違いしているのです。

実は日本でも、企業の規模が拡大する傾向はすでに進み始めています。少しずつですが、1企業当たりの社員数は上がっているのです。

これまでは女性の労働参加を促すなど、人口が減っても労働人口を減らさないようにし、なんとか企業の数を維持してきましたが、これからは労働人口を増やすことが難しくなります。人口が減れば、企業の数が減っていくのは当然なので、この流れを政策的に止めるようなことは、決してやるべきではありません。

経産省によると、今でも相当数の中小企業には後継者がいないそうです。後継者がいないというのは、多かれ少なかれ、その企業に魅力がないことを暗示していると言えます。社員から、または社長の子どもから、その企業を継ぎたいと思えるほどの持続性がないと判断されているだけなので、無理に存続させる必要もないように思います。

企業の数が減ると、社長というポジションが減ってしまうので、社長たちだけは困るかもしれません。しかし、企業が合併して規模が拡大すれば、安定性、持続性が改善します。さらに無駄がなくなって、生産性が向上します。当然、社員の給料は上がります。働く人たちにとっては、悪いことは何もないのです。次回はいよいよ、最低賃金の話に入ります。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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