人口減少で日本企業に「大合併」時代が訪れる 2060年までに、日本から「200万社」が消える

拡大
縮小

従業員数が少なければ少ないほど、新しい技術を導入することによるメリットは小さくなります。また、その技術を導入するための予算が足りないという問題も抱えやすくなります。ビッグデータなどはデータ量が勝負の分かれ目になるのに、規模が小さければ、規模の大きい企業と戦えるだけの数を集めるのは容易ではありません。

革新的な技術でも、広く普及して、実際の役に立たなければ何の意味もありません。たとえ最先端技術があっても、ただの潜在能力にすぎなくなってしまいます。特許庁によると日本は特許の数が世界一のようですが、使われていなかったり、事業化されていない特許の比率も世界一高いと言われています。

人口が減少しても、日本には高い技術力があるから大丈夫だという声をよく聞きますが、私には「技術革新という念仏を唱えていれば極楽浄土に行ける」と言われているようにしか聞こえません。

たしかに技術の「革新」と「普及」が進めば、人口減少など脅威ではありません。しかし、その技術の「普及」を進めていくためにも、企業の規模が小さいことが障害になります。この現実を直視して対策を打たないと、技術革新が単に現実から目をそらすための念仏に終わってしまいます。

女性活躍・研究開発も「規模次第」

メリット3:女性活躍が進む

小さい企業が多いことが、日本では女性活躍の妨げにもなっています。これが3つ目の問題です。

改めて言うまでもなく、日本国民の約半数は女性です。先進国では、女性活躍と生産性の間に0.77と言う極めて高い相関係数が確認できます。日本とアメリカの生産性の違いの約半分は、日本の女性の所得の低さで説明できます。

女性活躍と企業の規模に何の関係があるのか、疑問を持たれるかもしれませんが、やはり強い関連が確認できます。このことは、少し考えてみれば、当然のように思えてきます。

社員の数が多ければ、柔軟な組織運営が可能です。一方、小さい企業で、たとえば経理担当者が1人しかおらず、その人が女性の場合、仮に産休にでも入ろうものなら、途端にその会社はパニックに陥ってしまいます。もちろん、こういう場合、中堅以上の企業ならば対応可能な体制がとられていますが、それができない規模の小さい会社が日本にはゴマンとあるのです。

メリット4:研究開発費が増える

研究開発もまた、企業の規模と強い関係があります。実際、社員数が10%増えると研究開発費が7.5%増えるという分析結果も発表されています。

日本の対GDP比の研究開発投資は世界第3位で、このことを自慢げに語る人もいます。しかし、日本のGDPは人口規模に比べて、異常と言えるほど少ないので、この比較では研究開発費が多く見えてくるのは当然です。一方、1人当たり研究開発費で見ると、日本は世界第10位と、ドンと順位が下がります。小さい企業が多いことは、ここにも悪影響を及ぼしています。

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