日本語ができない外国人は「自己責任論」の嘘 馳浩議員が語る「日本語教育」の重要性

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田中:外国人や海外にルーツを持つ方々に対する日本語教育はこれまで、ごく一部の人たちだけが取り組んできた、いわばマイナーな分野だと思います。もちろん社会的に今後ますます重要なものとなるのは間違いないのですが、なぜ馳さんはその、あまりメジャーではない日本語教育の課題に取り組んでいらっしゃるのでしょうか?

言葉の壁がストレスだったプロレスラー時代の遠征

:私はプロレスラーのときに、プエルトリコとカナダのカルガリーで2年間生活をいたしました。まあ、プロですから、リングがあって、タイツがあって、シューズがあればそれで金は稼げるんだけども。同時に日常生活に大変苦労しました。中学高校大学と10年間英語は学びましたけれども残念ながら使える英語ではなく。高校生の時に、1カ月間レスリングの日本代表でアメリカのシアトルに遠征に行って、ホームステイもしていますので、英語がわかるのとしゃべるのとではこんなに違うんだなと。でも、私は、英語の点数はまあだいたい70点から80点で、英語の授業は好きだったんです。

馳浩衆議院議員(元文科相)(写真:GARDEN Journalism)

それでもアメリカで1カ月間遠征に行ったときに、あまりにもコミュニケーションが取れなかったので恥ずかしい思いをしたりして。逆にもっと自分なりにコミュニケーションが取れればいろんな意見交換もできて満足できたのにできなかったという反省もあって。いつかはね、いつかは英語でコミュニケーションできて、そのうえで考えていることのやり取りができたら、より自分が満足できるだろうなと。相手とコミュニケーションできなくてあうんの呼吸ってのはありえないから。それで正しくわかってもらって、俺も正しくわかり合いたいと。

プエルトルコは英語とスペイン語、カルガリーは英語。リングの上なら別に英語も日本語もスペイン語もないんです。でも、(言葉の面を含めて)生活の不安があると、ストレスが溜まって大変だった。したがってやっぱり異国で働く、その国の言語、少なくとも国際言語と言われている英語はきちんと喋れるようになりたいな、という欲求は心の中に常にあったんです。

(筆者の一言コラム)
社会の中で使われている言葉がわからないことの不安は、旅行であっても海外に行ったことがある方であれば、少なからず経験したことがあると思います。一時的な滞在であれば、ジェスチャーや翻訳機能を使って乗り越えることもできますが、長期にわたる生活となれば、それでは済みません。病気やケガ、子どもの教育、役所での手続きなど、生活のあらゆる場面において情報を得られなかったり、正確な思いや状況を自分の言葉で伝えることができなかったりなど、社会の中での主体的に生活することが難しくなります。

それだけでなく、地震や台風などの有事の際には避難を呼びかける防災無線のアナウンスが理解できず逃げ遅れたり、避難所の場所がわからず必要な支援を受けられなかったりなど、安全の確保にも影響を及ぼすことがあります。

ドイツやフランス、韓国など、日本に先んじて移民を受け入れてきた諸外国では、公的に無料または安価で一定水準の講師が言葉や社会制度などを学ぶ機会を提供している国も少なくありません。それは、共通語を学ぶ機会の整備が必要不可欠であり、社会統合の要ともなるからです。
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