前澤社長の「月旅行」批判する人に欠けた視点 「月に行くなら社員の給料を増やせ」は的外れ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

製造業のように広い土地に工場を建てて多額の設備投資を必要とするわけではなく、小売業のように全国各地にお店を構えて大量の店員を雇う必要もない。つまり設備投資が少なく、加えて低コストで多額の売り上げを得られる。

今さら説明するまでもないが、これはIT技術が従来の「大きい売り上げを得るには多額の設備投資と多数の従業員が必要」というビジネスの常識を変えた面だ。

ゾゾはインターネットで通信販売を行っているため小売業としての側面を持つが、販売はすべてインターネットを通じて行う。受注はウェブサイトで、そして流通は外部の配送業者が行う。その分だけ設備は少なくローコストで売り上げを得られる。

もちろんゾゾは洋服という「モノ」を扱うビジネスであるため、ウェブだけで完結するサービスではない。したがってアパレルメーカーから商品を預かり、撮影、採寸、保管、そして注文を受けた商品を梱包して配送するまでをゾゾベースと呼ばれる自社で運営する物流施設で行う。これはフルフィルメントと呼ばれ手間の掛かるサービスだが、それに見合った手数料をアパレルメーカーから受け取っている。

ネット通販はウェブサイトの見栄え、使い心地から品ぞろえ、そしてゾゾとしてのブランド力が売り上げに影響するが、物理的な側面としてはゾゾベースがどれだけ効率的に運用されているかで利益率は大きく変わる。なぜなら情報とモノが交差するのがゾゾベースだからだ。

高い効率性を誇るゾゾ

10年前、20年前と比べてパソコンの価格が大幅に下落しているように、IT機器(サーバー等)の価格は大幅に下がっている。現在では高性能なレンタルサーバーも以前に比べると低い価格で借りられるため、自前で設備を持つ必要もない。IT業界はこの恩恵を特に強く受けている。

ゾゾにとって近年の大きな投資は前述のゾゾベースだが、土地は保有していない。倉庫のリース料は10年間の総額で120億円、一方で設備に投じた金額は30億円程度と2012年当時としては大きな投資だったが、現在の年間売上高984億円、取扱高(受託販売の売り上げ)2705億円(いずれも2018年3月期実績)という規模を考えれば多額の投資とは言えない。

そして少ない資産で多額の利益を稼いでいる証拠として、ROEとROAのランキングでも国内の上場企業でいずれも8位と、極めて高い効率性を誇っている。ROEは自己資本利益率、ROAは総資産利益率、どちらも保有資産に対する利益率を表しているが、少ない保有資産で利益を増やすほど数字は高くなる。

次ページ高い株価の源泉は「のれん」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事