「増税反対論」は日本人を不幸にするだけだ 経済成長前提の社会モデルには限界

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そこで、消費増税分の使い道を変え、幼児教育の無償化などに充てることにした。だが、消費増税に際しての経済対策は、軽減税率から始まり、ポイント還元、プレミアム付き商品券など、キャッシュバック・ドミノになっている。増税によりばらまき財源が得られると気づいた。ここに自民党の本質が表れている。僕とは理念が違いますね。

増税せずにどうやって暮らしを保障するのか

──消費増税への反対は、今も根強いのではないですか。

そうでしょうか。消費増税を訴えた与党が選挙に勝ち、増税延期や消費税廃止を主張した野党が負けた。負担をどう分かち合うか、その議論からもう逃れられないことは、みんなわかっている。消費税に対して、左派は逆進性や中小企業の負担を問題として、アレルギー反応的な抵抗を示す。しかし、欧州の高負担高福祉国家は左派がつくった。増税せずに、どうやって人々の暮らしを保障するのか。消費増税反対で思考停止していては、この社会はよくなりません。

消費税については誤解も多い。消費税の使途は社会保障と地方交付税に限定されている。消費増税で法人減税の穴埋めをするのはけしからんという議論があるが、法人減税に伴う穴は消費税ではなく国債発行によって埋められている。

──民主党政権の看板政策だった子ども手当に対する評価は。

『幸福の増税論――財政はだれのために』(井手英策 著/岩波新書/840円+税/236ページ)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

子育てに対する手当は必要で、それを一部の人ではなく、すべての人を対象にするという考え方はすばらしかった。しかし、民主党はしっかり理論武装ができていなかったから、ばらまきという批判を受けると、ひるんでしまった。

確かに、そんな金があるなら年金をよこせという、老人の批判は強かった。現金配布にはそういう意見が出る。だから、金を配るベーシックインカムではなく、すべての人に医療や介護、教育などのベーシックサービスを提供することを主張しているのです。

──人間は正義のために助け合うのではなく、必要のために助け合ってきたという指摘は重いですね。

みんなが必要なものをみんなで満たそう、というのが財政の原則です。消費増税で得た金を貧しい人だけに使おうとすると、増税に「ノー」という声が出る。みんなが受益者になる仕組みができれば、賛成が増えるはずです。

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