自分の「売り物」の価値を心から信じていること。その信頼の源泉は、エンパイア・ブラスが彼に与えた感銘と衝撃であろう。
自分自身の人や演奏者としての価値ではなく、エンパイア・ブラスが示したような、「金管アンサンブル」という芸術形態の価値を信頼しているのではないだろうか。
この信頼がもたらす行動力は、後にボストンの大規模な広告会社ヒル・ホリデー社のスポンサーシップ獲得につながる。社のトップを、自身が出演したコンサート後のパーティーで見かけ、勇気を出して得意の「ダメもと精神」で話しかけてみたのだ。
『ボストン・ブラスのことを説明して、どんな活動をしているかを伝えつつ、もう一段上のレベルに行きたいから、「メディア向けのプレスキットの作り方について相談したい」と言ってみたんだ。すると彼は、「もちろんさ!」と言ってくれて、名刺をくれた。
結局、メディア向け資料のデザインをいちから全部やり直すためのチームを作ってくれるというとんでもない展開になった。しかも全部無料でやってくれると。その一環で、初めてちゃんとしたプロにグループの写真を撮ってもらえたし、チームのみんながそれぞれに一流の仕事をしてくれたよ』
これをきっかけに、ボストン・ブラスのブランディングは進化し、活躍の場をまた一段と広げていくことになるのだ。
コナーにとっての「責任感」
そして、コナーの無尽蔵の行動力にはもう1つの源泉がある。それは実はある種の「責任感」だ。
『いちばん怖いのは、「1年先のスケジュールを見る」ことだ。なぜなら、1年先のスケジュール帳は、真っ白だから! 保障された収入がない。だから、いつも1年とか1年半先を見越して、「さあ、営業するぞ」と決心する必要があるんだ。でも、それが尻を叩いてぼくを動かしてくれる。
しかも、自分だけじゃなくて、グループの同僚たちの生活もかかっている。ときには、愕然とすることもある。来年の収入が1つも確定していないという現実を見るとね。でもぼくはそういう生活を30年以上送ってきた。収入が決まっていないなら、何か動きを起こして、何とかするしかないんだ』
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