筆者は「怖いけれど、自分が動いて自分が努力して道を切り開く以外に方法はない」というこの感覚は実はとても音楽家的であると思う。
というのも、音楽家は子供のころからステージに立っているのだが、ステージでの演奏がどうなるかは100%自分の練習と準備次第なのだ。
練習も当然、面倒だ。そして人前に立つのは音楽家にとっても恐ろしいことである。
怠惰や恐怖に呑まれて何もしないままその日を迎えるのか?
それともいまできる練習をまずはするのか。
その選択を、音楽家は小さいころから毎日のように行っているのだ。
コナーは、『The Portfolio Musician: Case Studies in Success』という共著を出版している。47人の「業界で食っていけている音楽家」へのインタビューで構成された本だ。
47人に共通するキーポイントについて、コナーはこう述べている。
『ひとつのことにしっかり努力して非常に優れてできるようになれ。そしてほかにもできることを身につけておく。音楽の世界は誰しもポートフォリオ的な生き方をして複数の収入源を持つことで成立するんだ』
一心不乱に専心して一芸に秀でること。そうして周りより優秀になれば音楽家として成功するし、それ以外に食っていく術はない――。
それがいまでも、日本でも欧米でもおそらく大多数の音大生がはっきりと、あるいは言外に刷り込まれ信じる考え方であろう。
コナーの述べていることは、それを明快に否定する。
……そういうと、集中して努力することを否定していると誤解されそうだが、違う。
音楽家には「楽して稼ごう」という者は少ない
『失敗しても、変わらず努力を続けろ。あらゆる機会にYESと言え。学ぶことを決してやめるな。NOと言われることを恐れるな。できる仕事は全部やってみろ。本当に、たくさんの努力が必要なんだ。インタビューの47人全員が近道なんてしていなくって、毎日一生懸命頑張っている』
音楽を志した者に、「楽して稼ごう」という者は少ない。
努力なくして成果は得られないことを音楽を通じてとっくに学んでいるのだ。
毎日の、コツコツと積み上げる努力の仕方。それを音楽でもう身につけているのだから、それをマーケティングとビジネスというフィールドに活かせば、音楽で食っていく道が開けるのである。
(文中敬称略)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら