ホルン奏者である筆者の経験からいえば、クラシック音楽の世界で演奏者として成功していたりポジションを獲得していたりする者の多くにこれと似た「偉大なる音楽家との邂逅」およびそこから受ける「強烈な原体験」を持っており、自分もああなるんだ・こんな演奏をするんだという像をまっすぐに追いかけてきた者たちが多い。トップアスリートの成功譚と似ている。
コナーの場合、「自分もあのようなグループを実現する」という大目標が屹立され、その「手段」としてマーケティング・ブランディング・営業活動が避けられない必須事項だと認識していたことが特筆できる。
お金を稼がねば、生活せねばということから「必要に迫られて」マーケティング・ビジネスを学ぼうとするのがクラシック音楽家にはどちらかといえば多いと思うが、コナーは自らの夢の実現の手段として位置づけられているのである。圧迫によって動くのか、夢に向かって動かずにはいられないのかで同じ行動や手段でもそこに投入されるエネルギーは質量共に大きく差が出ることを示しているのではないだろうか。
コナーの「へこたれなさ」の源泉
『ぼくたちのようなグループを雇う立場にあるようなコンサート企画責任者に対して営業をかけて断られるようなことはいくらでもあったわけだけれど、断られるということを個人的に受け取ることは決してしなかった。自分が嫌われたんだ、とか、グループが嫌われたんだ、とか思わずに、いま時期的に無理なだけなんだと捉えるようにした』
『成約は10回に1回。それなら9回断られれば成約するんだから、1回断られるたびに成約が近づいているんだ。だから断られるのを期待しているのさ!』……有名なセールスマンの格言だ。
このへこたれなさはどこから来るのか?
『最初から抵抗なくやっていた。とにかくグループがうまくいってほしかったから。このグループには、それが結婚式の演奏であってもパーティーのBGMであっても、届ける価値のあるモノを持っていると思っていた。良い売り物だと思っていたんだ』
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