「パラアスリート講師」に学ぶ共生社会の実現 「あすチャレ!Academy」を実際に受講

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「いま練習では60キロのバーベルを挙げていますが、パラリンピックに出るには80キロ以上を挙げないと」と、仕事と競技を両立しながら目標に向かっている。

「障害の程度は人それぞれですが、私の場合は、太ももの裏側の感覚がないなど、腰から下の自由が利きません」という。

彼女は車いすを使っているが、車いすユーザーと話す場合にどうしたらいいのだろうか。

「その人との関係性にもよりますが、初めてのときはまず『どうしたら話しやすいですか?』と聞いてもらうほうがいいですね。私は横に立たれるのは苦手ですので、正面に来てくださいということもあります」という。これは山本選手の場合なので他の車いすユーザーが同じというわけではない。どうすれば互いにいいかと「聞くこと」が大事ということだ。

電車通勤をしているが、満員電車の中で押されて、車いすに座っている山本選手に膝の上に座ってしまう人が「日々います」という。そのときは、持ち前の力で起こしてあげるというが「ありがとう」や「すみません」などの声がけをされることはなく、コミュニケーションが取れていないなと感じるという。この記事を読んでいる方で座ってしまった方がいるかもしれない。

「困るのはエレベーター。並んでいても、後ろから来る人で乗れなくなることもあります。皆さんに乗らないでと言っているわけではなく、それぞれのコンディションでその日、自分にはどんな選択肢(階段、エレベーター、エスカレーターなど)があるのか考えてほしい」という。共生社会のキーワードの1つだろう。

最も「障害」になるのは、段差だという。「段差の多いカフェやレストランなど、1段目は上がれてることはあっても2段目以上になるとだめ。なので皆さんと同じ(店を選ぶ)選択肢がないんです」というのが現状。そんなときはどうしたら?「『何かできることはありますか?』と聞いていただけたら『もう1人呼んでください』とお願いできて、持ち上げてもらうこともできる」。やはり自分にできることを相手に聞いてみるのが第1歩のようだ。

最後に「グループワーク」で、学んできたことを基に小グループで出題された問題を話し合い、考える。個人で講習を受けた場合は初めて知り合った人たちばかりなので、それぞれが持つ考え方も違うのに気づく。詳細は紹介できないが「考えてみる」「話してみる」が重要なところだ。約2時間でプログラムが終了。名前入りの修了証書をもらった。

組織でセミナーを受けることもできる

「あすチャレ!Academy」は、同セミナーの公式HPから申し込める。企業や団体で申し込むことができ、個人向けのAcademyも開催されていて、同じくHPから申し込める。

団体申し込みの場合、費用は一般:30~70人までが1回9万円。学生:45~70人までで1回9万円、30~44人は1人2000円。個人受講は1人4000円。全国各地にさまざまな障害のある当事者講師が派遣される。

また別記事『「パラスポーツ」専用施設が誕生した舞台裏』(2018年6月21日配信)でも紹介した日本財団パラアリーナで開催される場合は、パラアリーナの施設見学もできる。

「楽しく学べ、実技をやってみるのがいちばん身につく方法だと思います。いろいろな職業の方がいて、その方たちに伝えてくれる力がある。(個人参加できる会を)定期的に開催していきたい」と山本選手はいう。

あと1年7カ月後に迫ったパラリンピックだが、その後につながるプログラムでもある。個人はもちろん、会社、団体など組織全体で受けるといい機会になる。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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