GDPデフレーターとともにGDPギャップもマイナス化した。内閣府の試算によるとマイナス0.2%と、7四半期ぶりのマイナスに転落した。自然災害が相次いだ7~9月期の反動により、10~12月期はプラス成長が見込まれるものの、潜在成長率(年率プラス1.0%)を上回り、マイナスのギャップを解消できるかどうかは不透明である。また、2019年度は世界経済の成長鈍化による外需の低迷、消費税率引き上げによる消費下押しなどが想定され、潜在成長率を下回る可能性が高い。安定的にGDPギャップがプラスとなることは困難だろう。
最後に、単位労働コスト(名目雇用者報酬÷実質GDP)については、昨年来の雇用者報酬の上振れが影響し、前年同期比はまとまった幅のプラスを維持してきた(7~9月期は同プラス2.7%)。GDP統計が発表された段階では、デフレ脱却宣言に対する不安がない唯一の項目だった。
しかし、雇用者報酬の基礎統計である厚生労働省の毎月勤労統計の算出に不正が発覚し、2017年と2018年のデータに連続性がないことがわかった。2017年は大企業が少なく、水準が過小評価されていた可能性が高い。データの修正によって2018年の雇用者報酬の伸び率は鈍化するだろう。つまり、単位労働コストの伸び率についても、下方修正されるとみられ、修正幅によってはマイナス化することもあり得る。
今回の景気サイクルでは「脱却」できず
菅義偉官房長官は7月24日、都内で行われた講演で「デフレ脱却宣言ができるよう、アベノミクスをさらに自信を持って推し進めたい」と述べた。2019年4月の統一地方選(都道府県と政令指定都市の首長・議員選挙が4月7日、それ以外の市区町村の首長・議員選挙が同21日となる予定)、7月の参院選に向けて「アベノミクスの成果」をアピールするために「デフレ脱却宣言」を行うとの見方もあるようだが、前述のように毎勤統計の不正発覚によって「デフレ脱却4指標」すべてがマイナスになる可能性が生じるなど、脱却宣言は非常に困難な状況になった。
また、直接的な影響はないとしても、政府が「デフレ脱却宣言」を封印することは、日銀の金融政策が出口に向かうという見方をトーンダウンさせることにもつながるだろう。出口の見えないデフレとの戦いを、政府・日銀は一段と長期間続けることになりそうだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら