今の「円の価値」は割安なのか、割高なのか? 為替相場の妥当性をしっかり検証してみよう

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実効為替レートとは、「ある国の通貨について、その国の輸出入相手国の通貨との為替レートを、輸出入の量に応じて加重平均して求めるレート」のことをいう。

通貨の価値というのは、私たちの日常生活や、輸出入を行う企業の活動に大きな影響を与えるものなので、「輸出入の量で貿易相手国との為替レートを加重平均して算出したレートこそが、その通貨の実際の価値を反映するだろう」という考え方によるものだ。

さらに、前出のように輸出入量で加重平均した為替レートは1つの通貨の価値を表すことができることは説明したとおりだが、そもそもそれぞれの国でインフレ率が異なるため、インフレ率分も調整することが必要になる。このように「国ごとのインフレ率の違いを調整した実効為替レート」のことを「実質実効為替レート」という。この実質実効為替レートを見ることによって、通貨の現在の価値と、その推移を見ることができる。

実質実効為替レートと均衡実質為替レートを比較する

さて、ある通貨の現在の価値については、実質実効為替レートで見ることができることがわかった。その通貨が適正な価値よりも割高な状態にあるのか、それとも割安な状態にあるのかはどう判断すればいいだろうか。それは前出の「実質実効為替レート」と、「均衡実質為替レート」を比較することによって行われる。

私たちが日常的に見ているドル円、ユーロ円といった通貨ペアの為替レートは、現在はネットでいつでも検索できる。また実質実効為替レートも、各国の中央銀行などの国際機関が公表しており、統計データを用いることによって比較的簡単に計算できる。

一方で、通貨の適正な価値である均衡実質為替レートは、複雑なモデルで「推計」を行うことが必要だ。このレートを推計するモデルは数多く存在するが、ここではBloomberg Economicsが公表している均衡実質為替レートを用いて、円が適正と思われる価値に対してどのように推移してきたかを紹介しよう。

次ページ2018年のドル円相場は「ほぼ適正な水準」だった?
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