最新カローラはゴルフにどれだけ迫ったのか 5ドアハッチバック世界王者と徹底比較

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電子制御で減衰力可変のAVSは18インチとの組み合わせのみ。基本的な考え方は同じ方向性だが、味付けはよりスポーティーな方向だ。ドライブモードを「スポーツ+(EPS/AVSともにシッカリ感と安定感が増す)」に選択するとノーマルにもかかわらず「GRスポーツ!?」と呼んでもいいくらい元気に走らせることが可能だった。

ただ、どちらもここまで走るとパワートレインに欲が出てしまうのと、もう少しセンター付近に安心感のあるステア系と直進安定性が備わっていたら完璧だと思った。

一方、ゴルフは「これがCセグメントのハッチバックなの?」と思うくらいカッチリ&ドッシリした乗り味は健在だ。大幅改良でフットワーク変更のアナウンスはないものの、「MQB」はさまざまなモデルに水平展開されたことで熟成されたのか数値に表れない変化が感じられる。

もともと滑らかでスムーズなステアリング系は芯が入ったかのようにカッチリさが増しているし、足の動きもよりしなやかで動的質感も上がっているので快適性もレベルアップ。ハンドリングも基本的には安定方向でどこまでもビシーッと走る直進安定性はもちろん、従来よりもリアを積極的に使い4輪を使って曲がる感覚が強くなっている。

ゴルフの1.2L直噴ターボはリアサスがトレーリングアーム、1.4L直噴ターボは4リンクを採用する。ハイスピードでハードに走らない限り違いは、ほとんどわからないレベルである。この深化に多くの同業者は新型を「ゴルフ7.5」と呼んでいるが、筆者はこれが「本来のゴルフⅦ」だと思っている。ただ、パワートレインと同じく「さすが!!」と思う一方、面白みに欠けるのも事実だ。Cセグメントハッチバックの王道かつ世界のFFのベンチマークだと考えると、これで正解なのかもしれないが。

これまではゴルフの価格は適正だと思っていたが…

ちなみに価格はカローラ スポーツが210万6000~268万9200円、ゴルフが253万9000~331万9000円とカローラ スポーツのほうが若干安い設定となっている。

では、そろそろ結論にいこう。カローラ スポーツはゴルフとガチンコ勝負できるポテンシャルを備えるが、単なる後追いではなく独自の個性も持っており、特に「Fun to Drive」の部分に関してはゴルフを上回る部分もあると感じた。もちろんトータル性能で見ればゴルフに「一日の長」があるのも事実だが、確実に射程に入っている。筆者はこれまではゴルフの価格は適正だと思っていたのだが、カローラ スポーツを体感して「その考えも改める必要がある」と感じる今日この頃だ。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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