「独占男」との婚約を解消した36歳女性の顛末 「やきもち」という言葉では済まされない

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アプリの男性には適当に遊ばれ、相談所で出会った男性には放っておかれる。そんな経験の中で、伊藤の気持ちはまっすぐに自分に向かってきていることを感じたし、それに応えたいとも思っていた。

しかし、付き合いだして2カ月を過ぎた頃から、“これは一途な愛なのではなくて、独占欲と嫉妬心なのではないか”と感じるようになった。また、そのたびに怒りだす性格に、“このまま結婚していいのか?”と思うようになった。

あるとき、そのことを母に相談したという。すると母が言った。

「それって、優子を好きだから、やきもちを焼いているんでしょう? そのやきもちをあなたが“かわいい”と思えばいいんじゃないの。いい大学を出て有名な会社で働いているのだから、結婚するにはもってこいよ。それに、結婚して夫婦が何年も連れ添えば、やきもちも焼かなくなるわよ」

母の言葉に、「そうかもしれない。やきもちを焼くのは愛されている証拠だ」と自分に言い聞かせた。そして、出会ってから3カ月、伊藤からのプロポーズを受けて婚約をし、優子は私の相談所を成婚退会していった。

まさかのドラマのような偶然

11月に入り、お互いの親への挨拶も終え、その後は両家の顔合わせを都内のホテルでした。

ある日曜日のこと。銀座に婚約指輪を見に行くことになり、日比谷線の車内で並んで座っていた。すると六本木駅で左斜め前のドアから、大学時代のゼミ仲間であった佐島恒夫(仮名)が乗ってきた。彼も含めゼミ仲間とは今も気のおけない関係で、年に何度か集まって飲んでいた。

彼は、優子を見つけると笑顔で近づいてきて、座っている頭をポンポンとたたきながら言った。

「おっ、偶然だな。婚活、どうよ。男、できたか」

伊藤の嫉妬深い性格がわかっていただけに、ドキリとした。普段なら軽口には軽口で返せるのだけれど、なんだかオドオドしてしまっている自分がいた。横に座っていた伊藤をチラリと見ると、今にも怒り出しそうなこわばった顔つきをしていた。

優子は、しどろもどろになりながら、佐島に言った。

「あ、私、結婚が決まったのよ。ここにいるのが婚約者の伊藤さん。これから婚約指輪を買いに行くの」

佐島も伊藤の怒りに満ちた表情を察したのか、優子からは一歩下がって伊藤のほうに向き直り言った。

「あ、婚約者なんですね。失礼しました。大学のゼミで一緒だった佐島です。今度、ぜひみんなで飲みませんか? 2人の結婚のお祝いをしましょう」

伊藤はニコリともせず、頭を軽く下げただけだった。嫌な空気を感じたのか、そこの駅に用事があったのか、佐島は霞ケ関駅で、「じゃあ、またな。お幸せに」と言って、降りていった。

そこから、銀座までの2駅、伊藤は前を向いたまま一言も言葉を発せずに座っていた。しかし、顔は怒りに満ちていた。銀座で降り、駅の改札を出たところで、その怒りが大爆発した。

「なんだ、あの軽い男は。いい加減にしろ! もう婚約解消だ」

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