佐賀・有明海産の牡蠣が「世界一」と言える理由 レジェンド京都吉兆の徳岡会長もうなった

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実際、日本のマガキは病気に強く、成長速度と生存率の高さにも優れている。加えて味もよいために、世界の主要カキ生産市場において完全な主役となった。今や、ヨーロッパのカキの中心地フランスでさえ養殖カキの95%以上がマガキ(Crassostrea gigas)となっている。

海+達人の技が生み出す絶品

そのなかでも有明海産、とくに佐賀県沿岸のカキは、好条件に恵まれているのでいいものが獲れる。それはなぜか。理由は複数ある。

なぜ梅津さんの牡蠣は「世界一」なのか。その秘密は数々の試行錯誤から学んだ高い技術にある(撮影:山下恒之)

まず代表的なのが、有明海の干満差だ。カキは、海水に出入りさせることで強くなり、味わいもよくなる、と言われている。

また有明海独特の豊富な栄養素も特筆しておく必要があるだろう。有明海には多くの川が流入しており、豊富な栄養が陸から運ばれてくる。それに加え、佐賀・鹿島太良湾岸の特殊な形状は、栄養素が外洋へ拡散しにくい。

その結果、カキにとっては餌のプランクトンが豊富になるという好条件を生んでいる。さらに、塩分濃度がほかの海に比べてマイルドなことも重要だ。塩分濃度にして約3.0%の太良沖の海水は、カキにしょっぱすぎない、絶妙な塩味を付加してくれる。

このように、有明海はおいしいカキが産まれる条件に恵まれているが、それに加え、さまざまな工夫とノウハウで、カキをよりクリーミーで濃厚な味わいに育てているのが梅津聡さんだ。

では、梅津さんの技は、どこにあるのか。

「有明海でもどこでも、カキの生産者は皆、大きく育てようとします。そりゃあ、大きいほうが高く売れるのが普通ですから。でも私はわざと小さく育てています。そのほうが、旨味が凝縮されますから」。なるほど、消費者の目線で見ると、一見細く長く大きな殻のついたカキが見栄えもよく、おいしいと思いがちだ。だが梅津さんの考えは違う。旨味が凝縮されたおいしいカキなら単価も高く売れる。すなわち味で勝負というわけだ。

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