海外マラソン、次に狙うべきはシンガポール?

政府全面バックアップでメジャー入り目指す

カテゴリーは全部で6部門ある。内訳は大会初日の5、10kmマラソンと親子マラソンのキッズダッシュ。最終日の2日目に行われるハーフマラソン(21.1km)とフルマラソン、車いすマラソン(ともに42.195km)だ。

中でもユニークなのはキッズダッシュで、2018年6月、米朝首脳会議が開かれた本島南部のセントーサ島にあるユニバーサル・スタジオ・シンガポールを会場に、0歳児から12歳までの子どもと親、約3000人が参加した。まだ薄暗い朝7時、年齢別に分かれた4つのグループが順次スタート。

キッズダッシュの取り組みも非常にユニークだった(写真:SCSM2018)

おなじみのキャラクターやクリスマスデコレーションに彩られた600mのコースを思い思いに走ったり歩いたりして楽しんだ。親子の参加意欲を掻き立てる巧妙なロケーションと言えるだろう。

一方、フルマラソンのエリートランナーだが、その顔ぶれは2018年パリマラソン男子優勝者のポール・ロンヤンガタ(ケニア/自己ベスト2時間6分10秒)や今大会最速記録保持者でも2時間5分21秒とややインパクトに欠けた。

本来ならば記録が狙える平坦コースはランナーに好まれるはずだが、気温30度、湿度90パーセント超の高温多湿なコンディションが世界のトップランナーを遠ざけたことは否めない。ちなみに男子フルマラソンの優勝者はケニア勢のジョシュア・キプコリル、女子フルマラソンは同じケニア勢のプリスコ・チェロノだった。

しかし、車いすマラソンには豪華な顔ぶれが揃った。パラリンピックで5個のメダルを獲得しているジョシュア・ジョージ(アメリカ)や2016年リオパラリンピックの女子マラソン金メダリストのユウ・レイコウ(中国)らが出場。日本からも男子4人、女子1人の計5人が出場し、2017年ベルリンマラソン2位の洞ノ上浩太が優勝。同年の東京マラソンを制した渡辺勝が2位に入り日本勢が躍動した。

高齢化などの社会的課題をスポーツで解決

実はシンガポールはマラソンだけでなくスポーツを国策に据え力を入れている。背景には日本と同じ近代国家ならではの社会的課題が横たわる。最たるは高齢化で、シンガポール政府の発表によると2030年までに65歳以上の人口が90万人に達し、シンガポール総人口の約16パーセントを占めるとされている。

特にシンガポールには日本のような国民健康保険制度がなく個人の医療費負担が大きいため、病気予防対策は日本以上に深刻だ。その他にも子どもの肥満や自家用車の増加抑制、女性の活躍促進などにもスポーツを活用し、特にマラソンやウォーキング、サイクリングの普及を進めているという。 

シンガポールマラソンを通じて見えてきた今の姿は非常に興味深いものだった(筆者撮影)

これらの政策を推し進めるため、2014年に発足した国立機関「スポーツシンガポール」(旧シンガポールスポーツカウンシル)のCEOであるリム・テック・イン氏はこう語る。

「シンガポールマラソンがワールドマラソンメジャーズの仲間入りを果たすことで国民のスポーツ参画意欲が高まり、健康的なライフスタイルの確立に貢献できるだろう。同時にシンガポールのスポーツ国家としての認知度向上と東南アジア地域のスポーツ産業の成長にも繋がると確信している」

国際マラソン大会という一つのスポーツイベントを通して見えてくる、アジア有数の経済大国シンガポールの姿は実に興味深い。日本からの飛行時間は直行便で約7時間。時差も1時間(シンガポールが1時間遅れ)と渡航しやすく参加しやすいシンガポールマラソン。富裕層も集うラグジュアリーなマラソン大会を2019年のエントリーリストに加えてみてはいかがだろう。

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