ホンダの「EVバイク」、真の狙い目はアジアだ 巨大市場インドの2輪販売は年間2000万台超
アジアでの2輪事業は、ホンダの稼ぎ頭といってよい。今2019年3月期、ホンダは業績の上方修正を繰り返している。メキシコの4輪工場が洪水で浸水し、被害額は400億円に上ったが、好調な東南アジアでの2輪事業で損失の大部分をカバーする算段だ。2018年3月期の2輪の販売台数は国内が約17万台に対し、アジアでは1660万台と日本の100倍ほど売れている。
今回、新しい電動バイクの車種に採用された「PCX」は、日本だけでなく、タイやインドネシア、ベトナムなどで人気のスクーターだ。125ccは同排気量のカブよりもやや大きく、積載性が高い。電動モビリティとしてのパッケージングのしやすさなども考慮し、PCXを最新電動バイクの車種として選んだという。
ホンダで2輪事業の企画を担う船瀬光晴課長は、「今回のPCX ELECTRICは、そもそも東南アジアでの展開を考えていた」と話す。インドネシアでは、電動バイクのバッテリー運用・管理のノウハウを獲得するため、PCX ELECTRICを使った実証実験を2019年の春ごろから始める。実証実験は官公庁や企業、個人事業主が対象で、バッテリーが着脱式という特性を生かし、各所に充電スポットを設置する予定だ。これであれば、個人の事業所などで充電をする必要がない。
バッテリーパックを生活の電力源に
そしてこの着脱式バッテリーパックにはもう1つの狙いが込められている。電気設備のないアジアの地域などで、バッテリーパックを蓄電池として利用することで、生活の足かつ、電力源として使えるようにすることだ。PCX ELECTRICに搭載されているのと同じパナソニック製電池を用いた実証実験を、ホンダはフィリピンで行っている。販売台数が期待できる東南アジアで、電動バイクを本格普及させたいホンダの意気込みがうかがえる。
また、ホンダのアジア市場での成長を語るうえで欠かせないのがインドだ。ここ数年は破竹の勢いだ。直近の1年では2150万台が販売され、市場成長率は16%を超える。過去5年でも最高水準となった。
しかし注目は市場の成長だけではない。インドでは、2020年から適用される新排ガス規制「バーラトステージ6(BS6)」が始まる。2017年に制定された現行の規制と比較し、NOx(窒素酸化物)の排出量を70~85%削減することが義務づけられ、世界でいちばん厳しい規制となる。インド政府が強力に推進する環境規制に、現地メーカーを含めた各社が対応を追われている。
ホンダは、規制を見据えた製品の買い替え需要や、周辺国への輸出を見込み、インドの年間生産能力を足元の640万台から、2020年には700万台に増強することを決めた。インドの2輪事業トップを務めるホンダ・モーター・サイクル・アンド・スクーター・インディア(HMSI)の加藤稔社長は「輸出専用モデルの品質をどう高めるかが課題だが、BS6の導入は製品のレベルを引き上げるチャンスだ」と語る。
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