ホンダの「EVバイク」、真の狙い目はアジアだ 巨大市場インドの2輪販売は年間2000万台超

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武蔵精密工業のインドの工場は近年、生産能力を増強している(記者撮影)

ホンダの増産に合わせ、工場の新稼働や拡張、能力増強を決めたホンダ系サプライヤーも少なくない。シャフトや変速機向けのギアなどを扱う武蔵精密工業の前田大・インド法人社長は、「BS6による後押しだけでなく、インドではスクーターへのシフトが進む。スクーターに強いホンダは、市場の伸び以上の成長が期待できる」と意気込む。近年はギアなどの生産能力増強に力を入れる。現地の非ホンダ系2輪メーカーへの納入も進んでおり、売り上げは右肩上がりだ。

BS6を実現するには、ガソリンの噴射装置を機械式のキャブレターから、電子制御で緻密な燃料調整ができるフュールインジェクション(FI)へ切り替えなければならない。

ケーヒンがインド北西部のラジャスタン州で建設中のニムラナ工場。新しい規制に対応したFIシステムを2019年から生産する計画だ(写真:ケーヒン)

現在、キャブレターのインドシェアで7割を占めるホンダ系サプライヤーのケーヒンは、FI化に向け、新工場を2019年に稼働させる。2輪部品の開発を担当する西澤賢一常務執行役員は、「デンソーやボッシュなどのメガサプライヤーが新たに参入し、競争が激しくなる。チップなどの部品は現地調達が難しいため、原価を下げることが課題だ」と語る。

製品開発段階でのサポート力を武器に、電子制御ユニット(ECU)やスロットルボディなども合わせて、インドでの2輪部品販売を2020年には2000万台(現在キャブレターでは約1500万台)に引き上げる計画だ。

インドへの電動バイク導入を検討中

環境規制のほかにインドで業界関係者を動揺させたのが、2輪も含めたすべての車両を2030年までに電動化するという政府の宣言だ。電動バイクの導入について、ホンダはどう考えているのか。加藤社長は2017年12月の段階では「電池の規格を交換式にするのかどうかなど、定まっていないことが多い。詳しいことは未定だ」と話していた。

1年が経った今、インド政府の関係者による「『すべての車両を電動車に』という目標は公式なものではない」という発言もあり、業界は落ち着きを取り戻しつつある。それでもホンダでアジア・太平洋地域を統括する五十嵐雅行執行役員は「インドでの電動バイク導入も視野に入れ、情報収集をしている」と話し、検討を継続していることを認める。現地では、電動バイク数モデルを販売する電動2輪車ベンチャーのアザー・エナジー社に老舗バイクメーカーのヒーロー・モトコープ社が出資するなど、各社が電動化に取り組み始めている。

時に「2輪頼み」とまでいわれるホンダの屋台骨事業も、4輪同様に電動化や規制対応などで大きな転換を迫られている。2019年はインドの規制対応に向けて投資も大きくかさむ年だが、さらなる高みを目指して、この山を乗り越えられるか。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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