独断!2019年に注目したい「ゆく町、くる町」 あなたの住む町は入っている?

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こうしたほかにないサービスや雰囲気が話題になり、各種メディアで取り上げられたことから問い合わせが殺到。近くにある青山学院大学、麻布大学など3大学以外に相模原市はもちろん、横浜市、町田市、厚木市、世田谷区などの20大学以上の学生から問い合わせを受けるようになった。社会人になっても住み替えず、住み続ける人もいる。

そんなに人気があるなら空室の不安がなかろうと、この町で不動産を買い、同社に管理してもらいたいと考える不動産投資家も多く、「淵野辺に絞って購入した、管理を頼む」と同社を訪れた人もいたとか。若い人を中心に人口が増えれば、それを目当てにしたサービスも増え、町はにぎわう。たった1社の不動産会社が始めた入居者向けのサービスが町全体をバリューアップしたわけである。

ここ数年じわじわと街並みが変化、若返りも

二子新地

再開発で全国に知られるようになった東急田園都市線二子玉川駅の1駅先、二子新地が変わってきている。もともとは大山街道(江戸時代に信仰を集めた大山詣りに使われた)の二子の渡しがあった場所で、大正期に花街が誕生、戦前の最盛期には100人ほどの芸者でにぎわったというが、戦後は徐々に衰退。10年ほど前までは寂れた雰囲気が漂っていた。

二子新地からは二子玉川がこのようにのぞめる(筆者撮影)

ところが、2010年に第1期の二子玉川再開発が完成、人気が高まるにつれ、二子橋を渡った先の二子新地にも目が向くようになってきた。多摩川を渡るだけなのに、東京都世田谷区から神奈川県川崎市高津区に入れば、家賃も物件価格もぐんと安くなる。

2014年には改札口の向かい、高架下にスーパーが誕生。利便性が向上したのはもちろん、町のイメージもアップした。2004年から続けられてきた大山街道フェスタで地元の歴史が認知されてきたこともあろう。乗降客数は上昇基調にあり、2012年からでも新築マンション4棟、賃貸マンションは数えきれないほど建設され、今も複数の建設が進んでいる。

以前からあった魚屋、肉屋などの商店に加え、2012年ごろから飲食店が増加。肉バルやイタリアンなど若い層を意識した業種が目立つようになっている。道行く人も若返っており、今後もこの傾向は続きそう。大山街道沿いも含め、地域には古い建物、空き家などがあり、しかも区画が小さい。

大型店ではなく個人店の集積が続けば、対岸とは異なる、個性的な町になっていきそう。個人的には世田谷区側と違い、川原でのバーベキューができるなど、より多摩川が身近という点にも魅力を感じている。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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