一般人が預金も下ろせない銀行の画一的対応 銀行のマネロン、振り込め詐欺対策に不満も

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Cについては海外送金の例だが、口座開設や入出金には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、口座開設等の際に、本人確認書類の提示と、職業、取引を行う目的などの確認(取引時確認)が求められている。「取引時確認」が必要となる主な取引(特定取引)は下記のとおりだ。

(1)口座開設、貸金庫、保護預かりの取引開始
(2)10万円を超える現金振り込み(含む外国送金)・持参人払式小切手による現金の受け取り
(3)200万円を超える現金・持参人払式小切手の入出金・両替・外貨両替
(4)融資取引

全銀協によるとこれは法律が定めた最低限のルールであるため、これより厳しい内規を設けている銀行もあるという。

マネーロンダリング(資金洗浄)対策として金融庁は2018年2月6日に「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を公表している。2019年10月には国際的な対策を目指した政府間機関であるFATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査も控えており、対策がきちんと講じられていなければ、日本の金融機関が海外金融機関との取引が円滑に進まなくなるおそれもある。そういった背景もあり金融庁が各金融機関に厳格な対応を求めている。

今回のニュージーランドにある自身の口座への50万円送金の事例では、現金の送金ではなく、自分の口座からの送金であり航空券の確認まで必要であったかどうかは少し疑問が残る。

トラブル防止と預金者の当然の権利のバランス

銀行を含む各金融機関は監督官庁である金融庁の方針、根拠となる法律を受けて相続トラブル防止、詐欺対策、マネーロンダリング対策をする必要があることは理解する一方で、一般人は何かの支出をする必要があるから預金をしていることがほとんどであり、預金引き出しや送金は当然の権利でもある。一般の顧客が不快な思いをしたり、本当に必要なお金を引き出せないようなことがないようにする必要がある。

細川 幸一 日本女子大学教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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