一般人が預金も下ろせない銀行の画一的対応 銀行のマネロン、振り込め詐欺対策に不満も

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こうした事例は3つに分類できる。

A:親族が預金の引き出しを希望するケース⇒事例1
B:振り込め詐欺被害を疑われて引き出しを拒否、場合によっては警察に通報されるケース⇒事例2
C:マネーロンダリングを疑われ送金などを拒否されるケース⇒事例3

Aについては、他人が預金を引き出すようなトラブル回避は銀行の責務であり、また預金者のためでもある。問題は不測の事態で本人が窓口に出向けない、あるいは意思を確認できない場合だろう。仮に本人が死亡した後だと相続関係が明らかになるまで引き出せなくなり、存命中に引き出したい親族の意向も理解できる。そのバランスをどうとるかは確かに難しい。

現在、金融機関から預金を引き出す際は本人確認が重要となっている。今回のケースは入院している母本人の意思確認が病気のためにできないなかで、家族が預金を引き出そうとした事例だ。制度的には本人の意思が確認できる委任状を用意するか、家庭裁判所に申し立てをして成年後見人となって意思表示できない母の代わりに預金を引き出す必要があるということになるが、実際には困る場合は多いだろう。

金融庁の方針としてはこういった場合の対応は各銀行の規則・判断によるとしている。画一的かつ明示したルールを作ると悪用されてしまうということのようだ。

振り込め詐欺対策は杓子定規の印象も

Bについてもいまだに振り込め詐欺被害が報告されるなかで、被害を食い止めるために銀行が啓発等の対策を取ることは十分理解できる。

しかし、今回明らかになった事例をみると杓子定規の印象を持つ。警察庁や都道府県警察では振り込め詐欺などの被害を防止する観点から、全国の金融機関に対し、高額の振り込みをする場合や高額の現金を持ち帰る場合に、顧客に声かけのほか、最寄りの警察署への連絡を求めている。

金融庁としても未然防止に向けた取り組みを要請していることから、詐欺に遭わないための注意喚起をするあまり、対応が画一的になってしまったことは否めない。

過去10年で見れば、2014年の振り込め詐欺やそれ以外の特殊詐欺(オレオレ詐欺など)を含めた被害総額は565億5000万円をピークに2017年には394億7000万円と漸減傾向にある。だが、警察側が確認できている認知件数は2014年比で36%増の18212件と増加している。

振り込め詐欺などの撲滅が最優先ではあるが、ほかの顧客がいるなかで警察と顧客が押し問答するような状況は問題であり、一人ひとりの顧客に合った適切な対応が求められている。

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