安室奈美恵が「平成最後の歌姫」になれたワケ

彼女は山口百恵のような「生きる伝説」だ

もちろん攻めていく姿勢はブレないので、バラードをリリースした後はまた必ず万人受けはしなさそうなHIPHOP色の強いアッパーチューンをぶつけて、ファンを退屈させることがなかった。

彼女自身が「居場所だった」と語るライブにおいても、一番の売りである、”踊って歌う”というスタイルを最優先に考えられており、衣装やステージングはあくまでそのスタイルを際立たせるためにあり、決してど派手な演出や口パクに頼らない方針を貫いている。

約2時間半のライブ中、彼女はヒールの高いニーハイブーツを履きながら激しく踊り歌い倒していくのだが、その様はもはやアスリートだ。10代の頃から衰えない美貌もさることながら、「スリムな体のどこにそんな体力があるのだろう?」と不思議であるが、安室奈美恵はきっと裏にある努力や苦労というものも私たちに見せることがなかった。ただただ、当たり前のように強く美しくステージに立っている。それが本当にスゴい。

「母親」としての安室奈美恵

いつまでも美しく若々しいのでつい忘れがちだが、安室奈美恵は母親でもある。沖縄県は離婚率が全国でもトップなのでシングルマザーも実に多いのだが、安室奈美恵も母子家庭で育ったように、本人もまたシングルマザーとして芸能活動を続けながらひとり息子を育てていた。

前夫との離婚直後、二の腕に息子の名前のタトゥーを彫っていたり、息子との休暇を優先するため2004年から紅白歌合戦出場を辞退するなど、ファンの間では、その溺愛ぶりは有名な話である。ただ、出産するとママドルに転身する女性アイドルや、子どもが2世タレントになっていくケースが芸能界では多い中、安室奈美恵は徹底して息子を表舞台に立たせるようなことをしなかった。

メディアでたまに息子とのエピソードを語ることはあったが、かつて女性誌が息子とのプライベート写真を無断で掲載した際には訴訟を起こすなど、プライバシーを侵害し普通の生活を脅かすようなことからは全力で息子を守っている。

「仕事と育児の両立」というテーマは、日本中で増え続けるシングルマザーのみならず、結婚・出産をしながらも仕事を続けたいと願う多くの女性たちが抱えているものだけに、見事にこなしている(ように見える)安室奈美恵は、同じ境遇の女性たちから支持を受けるのも当然だろう。

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安室奈美恵自身が作詞を手がけた「Say the word」は、どんな困難が立ちはだかろうとも子どもを守り抜くという決意と覚悟を表した歌だが、この手のポジティブなメッセージを含んだ楽曲に励まされたという子持ちの女性は少なくない。

そんなひとり息子もすでに成人を迎えているが、平成という時代が終わるこのタイミングで引退をした安室奈美恵はまだ41歳である。新しい時代がはじまろうとするのと同時に、子どもが独り立ちし、ひとりの女性として第二の人生がスタートするのだ。いちいち安室奈美恵はドラマティックだなと感心する。

歌姫・安室奈美恵はもういないが、彼女の今後の人生が明るいものであることを、いちファンなとして心から祈るばかりだ。

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