「キットカット」が受験の必須品になった理由 九州の「きっと勝っとお!」が由来だった

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今期の2019年は、慣れない受験地での心配事が増えがちな「試験当日の会場への移動」のサポート体制を整えた。全国9都市、150以上の大学正門までを無料でナビゲートするシステムで、スマホから無料で利用できる。試験当日、会場までの道に迷えば焦りや疲れを感じてしまう。そんなことのないよう、本来の実力を発揮できる環境を整え、受験生を応援しようというのだ。

「受験当日、祈るような気持ちで息子のポケットに「キットカット」を入れました」(50代女性)、「勉強の合間に、願をかけて食べていました」(20代男性)という声もあった。受験には、祈りもドラマもある。

日本の売り上げが世界でトップ

「キットカット」担当者には、お客さま相談室、質問サイト、会社の住所宛に手紙などあらゆる窓口にお礼メッセージが届く。「リラックスして合格しました、みんなで試合前に食べて勝ちました、などですね。皆さんの深いところに到達したのかな、と感動します。これは商品担当として、かけがえのないことです」。竹内さんは、そう明かしてくれた。

特設売り場(新宿)では、東京メトロ沿線上にある試験会場の出口が何番か、一目でわかるしおりを無料配布していた(筆者撮影)

「キットカット」は世界100カ国以上で販売され、日本が売り上げでトップを誇る。また、自然発生的に「受験シーズン」と結び付いた日本の現象は、「キットカット」の成功事例として、グループ全体に知られている。

大学受験者が減少する一方で、「キットカット」の1~2月の販売量は年々増えている。春を前にした季節。受験を終えてからも、自分と戦い、最大限の努力をした日々や、応援してくれた教師や家族の思い出がよみがえり、そっとこのチョコレートに手を伸ばす人が多いのかもしれない。

市川 歩美 チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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いちかわ あゆみ / Ayumi Ichikawa

大学卒業後、民間放送局に入社、その後NHKで、長年ディレクターとして番組企画・制作に携わる。現在はチョコレートを主なテーマとするジャーナリストとして、日本国内、カカオ生産地などの各地を取材し、情報サイト、TV、ラジオなど多くのメディアで情報発信をしている。チョコレートの魅力を広く伝えるコーディネーターとしても活動。商品の監修や開発にもかかわる。

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