「70年ぶり大改革」で日本漁業は復活するか 過去30年で生産倍増、世界の漁業は成長産業

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つまり、世界的に漁業が成長産業となる中、「ニッポン1人負け」の構図が鮮明になっている。こうした情勢変化に対応し、水産資源の回復を図りつつ日本の漁業の衰退に歯止めをかけようというのが法改正の趣旨だが、問題はどこまで実効性を高められるかだ。

法改正の大きな柱は2つある。1つは、水産資源を持続可能な水準に維持回復させるため、国際的にみて遜色のない科学的な資源管理システムを新たに導入すること。もう1つは、都道府県が養殖など沿岸漁業の漁業権を付与する際に地元の漁協や漁業者を優先してきた規定を廃止し、企業などの参入を促進することだ。

新しい資源管理システムは、政府が毎年度設定するEEZ内での漁獲可能量(TAC)の対象を今の8魚種から順次拡大し、早期に漁獲量ベースで8割(現在は約5割)まで拡大する。TAC対象魚種には漁船ごとの個別割り当て(IQ)が新たに導入される。TACとIQを組み合わせることで早い者勝ちの漁獲競争を避けることができ、魚の価値が高くなる時期まで待って操業することも可能になる。

漁業資源は回復できるか

TACを設定する際には、再生産を安定させる最低限の資源水準をベースとする方式から、国際的なスタンダードである最大持続生産量(MSY)の概念をベースとする方式に変更する。資源の枯渇を防ぐだけではなく、持続的に最大の資源量を得るという目標を掲げることで資源の持続的回復を図るものだ。

ただ、実効性については疑問も残る。日本水産学会は漁業法改正に対する意見書の中で「(MSYが)科学的知見を重視した資源管理といっても、現段階では科学理論が実態を反映しきれていない側面や、データも完全ではない側面がある」と指摘する。

確かに、これまでのTAC設定のあり方には大きな問題があった。資源の減少が危惧されているサンマやスルメイカにしても、TACの漁獲枠は実際の漁獲実績の2~3倍以上に設定されていた(表参照)。これでは資源の回復はとうてい見込めない。MSYを前提とした新方式が、こうした従来の欠陥をどこまで修正できるかは不透明だ。

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