いよいよアメリカ株の「溶解」が始まった 2019年には株価下落の「第2弾」がやってくる

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こうしたアメリカの幅広い証券・金融市場の溶解は、日本株も直撃しそうだ。筆者のコラムの読者のなかには、筆者が「すでにアメリカの経済が悪化している」と主張している、と誤解する人がいるかもしれない。だが、今はまだアメリカの経済は堅調で、市場は先行きの悪化の可能性を先取りしているに過ぎない。つまり、足元までのアメリカ主導の株価下落は、「第1弾」だと位置づけられる。

2019年のどこかで「株価下落第2弾」が始まる

2019年、実際にアメリカの経済が悪化し、その現実を反映して株価がさらに深く下落する局面が生じると懸念している。それはいわば「第2弾」だ。日本の株価も、2019年の方が、下値は深くなるだろう。

2019年の日本独自の景気にとっての悪材料は、10月からの消費増税だ。不幸なことに、まだ足元の世界経済は堅調だ。このため政府が、「最近の世界の株価の下振れは、堅調な経済実態を反映していない単なる短期的な下振れだ」と判断し、2019年度予算案と合わせて、消費税率の引き上げが正式に決定される(正確な言い方をすれば、すでに決定されている引き上げが追認される)可能性が高いものと見込まれる。

すると、たとえ、2019年実際にアメリカに引きずられる形で、日本を含む世界経済が悪化したとしても、「もう消費税引き上げは撤回できない」という事態になり、税率引き上げに突入していく、という展開が想定される。なお、筆者はそうした事態になることを望んでいるわけではない。消費税率を上げるべきかどうか、という点と、消費税率が実際に上がってしまうかどうか、という予想を、区別して議論しているだけだ。つまり、「消費税率を上げるべきではないが、上がることになってしまうと予想する」というのが筆者の主張だ。

さて2019年と見込まれる、さらに深い株価の底の時期についてだが、世界経済が悪化するのに2019年一杯かかっても、市場はそれを先取りするので、景気との関係では、2019年央が日経平均の底値になると予想する。また消費増税の影響も、税率が上がってから市場が騒ぐというより、「こんな世界景気の状況になってしまったのに、税率引き上げを回避できないため、先行きの日本経済は大変なことになるかもしれない」という懸念を、早めに日本株が織り込みそうだ。この点でも、今のところの暫定予想という注釈がつくが、「日経平均は、2019年央が一番安い」という予想でよい、と考えている。

これまでは、2019年央の日経平均の安値としては、「2万円前後の攻防」、つまり2万円を割れて1万9000円台の可能性がある、という言い方をしてきた。しかし、足元これほど急速に市場の悪化が進んでいることで、2019年は投資家の心理が一段と悪化し、理屈抜きの投げ売りなどが出る展開も否定はできない。このため、2019年央の日経平均の下値メドを1万8000円(今年10月の高値から25%下落した水準)と下方修正するが、あくまでもメドに過ぎない。

こうした下に向かっての大きな流れの中に、今週を位置づける。冒頭で述べたように、足元の市場には売られ過ぎの部分もあるし、通常は年末で内外投資家は大きくは動かない時期なので、いったんは株価が落ち着く、あるいは戻ってもおかしくはない。その一方で、投資家の不安心理は根強く、加えてアメリカでの暫定予算切れによる政府機関閉鎖が長期化する恐れもある(本稿執筆時では、米議会の新しい動きは聞いていない)。このため、今週の日経平均株価は、1万9000円~2万0500円を見込む。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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