いよいよアメリカ株の「溶解」が始まった 2019年には株価下落の「第2弾」がやってくる

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このように、市場が勝手な期待(習主席が妥協策を出すとか、米連銀が債券保有残の縮小ペースを減速させるとか)をして、それがないからといって(実態に何も悪い変化があったわけではないのに)勝手に失望する、というのは「行き過ぎ」「売られ過ぎ」を示していると考えられる。とすれば、目先はいったん、日米等の株価がリバウンドしてもおかしくはない。

アメリカ株価の「溶解」が始まった?

とは言うものの、先週だけでなく10月や12月を中心とした世界的な市場波乱の背景には、中期的な株価下落の流れ「も」あると考えている。その理由は、当コラムでも、たとえば11月28日付の「米市場でひそかに語られる悲観論『3つの根拠』」を含め何度か述べたが、アメリカ経済が2019年悪化すると見込んでいるためだ。アメリカ経済の悪化は、世界経済を押し下げるとともに、同国の株価の下落や米ドルの下落を引き起こし、他国市場を巻き込みそうだ。

このように、懸念しているアメリカ市場の「溶解」は、すでに始まりつつある。たとえば先週の世界の株式市場を見渡すと、特にアメリカの株価の下落が大きい。先週の世界の株価指数の騰落率では、最も下落したのはアルゼンチンメルバル指数で、8.5%の下落だったが、それに続くのは、米ラッセル2000(8.4%下落)、ナスダック総合(8.3%下落)、S&P500(7.0%下落)、ニューヨークダウ工業株(6.8%下落)と、アメリカの株価指数が下落率上位をほぼ独占した状態だ。

アメリカで先週市場が波乱に見舞われたのは、株式だけではない。為替市場でも、米ドルは円のみならずユーロなど、他の主要通貨に対して軟化している。加えて、やはり前回のコラムで懸念していたが、アメリカの社債の売りが加速しつつある。ジャンク債(投資適格債より格付けが悪い債券)の利回りとアメリカの国債の利回り格差は、数値が大きくなるほど、ジャンク債が相対的に売られている(ジャンク債の価格が大きく下落)ことを示す。その利回り差の週平均値をみると、最近では9月最終週の3.24%が最低だったが、12月14日には4.46%に拡大していた。これが12月21日は、一気に5.22%に広がっている。

ジャンク債だけではなく、投資適格債の範疇に入るBBB格債についても、国債との利回り格差は、やはり9月28日の1.41%が最近の最低値だった。これが12月21日には、1.96%にまで広がっている。BBB格債は、投資適格債とされているので、年金、財団、基金、公的資金など、公的性の高い資金も投資している。

しかも、最近までの低金利の環境下で、そういった投資家は、国債より高い利回りを求めて、国債よりAAA格社債、さらにAA、A、そしてBBBと、投資対象をシフトしてきたと推察される。このため、BBB格債の価格下落は、幅広い投資家にとって打撃になるし、BBB格からBB格に格下げが生じてジャンクに落ちれば、公共性が高い投資家は、機械的に社債を投げ売りせざるを得ない。やはりアメリカでは、株式も社債も売られ、現金や短期国債を除けば、何に投資をしていても損失を被る、という事態が生じると懸念されるわけだ。

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