東芝出資で驚愕利回り、投資ファンド高笑い 大型増資に応じたファンドのその後を追跡

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ARCMの名を冠する3ファンドは、2017年12月5日の新株発行から4日目に引受株のすべてを売り払っている。わずか4日間で投資額に対し約12%の利益をたたき出した。借入金を活用しレバレッジをかけていれば利益はさらに膨らむ。そうでなくても、IRR(内部収益率)から見れば大成功だ。

約100億円の利益を上げたファンドも

日本で著名なサード・ポイント系のファンドは、実に新株発行の前日から売却を開始(カラ売りを活用していたと思われる)、約1週間で出口戦略を完了した。

実現益の上位はセガンティやエリオットなど引受額上位と重なり、約100億円の利益を得ている。一方で、旧村上ファンド系のエフィッシモが運営するEMCや、米ハーバード大学が運営するファンドなどはまだ保有したままだ。

東芝は海外投資家に投資回収の道も用意する。現在実施中の7000億円規模の自社株買いだ。2018年11月12日以降に3回、12月中旬までに2576億円分買っている。平均単価は3762円。第三者割当の価格より43%高い(2018年10月に10株を1株とする株式併合を実施)。今後の株価次第だが、まだ東芝株を保有するファンドも3〜4割の利益を出すことは確実だ。

10%ディスカウントで発行した株を1年後に高値で買い戻しているのだから、東芝にとって喜べる取引ではない。ただ増資後に株価が上昇しており、既存株主にとっても増資は正解だったという理屈は成り立つ。

いずれにせよ、最大の利を得たのがファンドであることは間違いない。リスクテイクの対価とはいえ、ファンド関係者の高笑いが聞こえてきそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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