「英語を話せる子」が自然にやっている勉強法 「今年こそ英語」と張り切る親に教えたい

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さて、最後に私がぜひ提案したいのは「本を読む」ということです。本も日本語の本や絵本です。英語を身に付けるのに、なぜ日本語の本なのかと不思議に思われることでしょう。

今、子どもたちの日本語の読解力や語彙力をふくんだ言語能力の育成が課題となっています。情報通信技術(ICT)の利用が増え、多様な情報に触れることができるようになった一方で、視覚的な情報と言葉との結びつきが弱まり、情報を深く理解したり、内容を正しく理解したりすることが難しくなってきているのです。文部科学省も今回の学習指導要領改訂において、子どもたちの「語彙の量と質の違いが学力差に大きく影響し……、言語能力の育成は課題」としています。

まずは日本語を理解することが大切

母語の日本語で理解できなければ、外国語である英語を理解することができないのは言うまでもありません。外国語だけでなくあらゆる教科においても言葉が担う部分は大きく、言語能力が学力に影響するのは当然です。

文部科学省は、このような言語能力の育成には、「創造的・論理的思考の側面」「感性・情緒の側面」「他者とのコミュニケーションの側面」があり、いくら言語知識や技術を身に付けても、思考や判断、表現はできないと言っています。この言語能力を身に付けるには、乳幼児期の保護者や周囲の人(大人だけでなく兄姉などの子どももふくむ)との会話から始まり、幼少期の絵本の読み聞かせや読書が重要です。

特に絵本や物語の読み聞かせは重要です。本は知識を知るためのものではなく、子どもの心を豊かにするためのものです。子どもは読み聞かせてもらいながら、読み手とのコミュニケーションを楽しんでいるのです。

風邪を引いて弱っている中学生になった息子から、「ボクにも本を読んで」といわれて驚いた、というお母さんに会ったことがあります。幼いときに読んでもらった心地よい思いのある子どもは、何歳になっても、たとえ自分で本が読めるようになっても、本を読んでもらいたいのです。このようにして読み手との充分なコミュニケーションが子どもの心を満たして安定し、言葉も吸収され、身についていきます。

今は保護者も忙しくなり、なかなかこどもとの会話や絵本の読み聞かせができない親子が増えています。しかしながらスマホやモバイル、テレビに子育てを任せていては言語能力は育ちません。ましてや英語を身に付けるのは難しいでしょう。

子どもが将来、英語を身に付けるには、実はは幼少期からのこのような母語の豊かな言語環境が必要です。豊かな母語、言語能力が、豊かな英語を育てていくことにつながっていくのです。

木原 竜平 ラボ教育センター 教育事業局長

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きはら りゅうへい / Ryuhei Kihara

1987年、筑波大学卒業、ラボ教育センター入社。東京、名古屋、大阪にて営業、指導者研修を担当。2002年より東京本社にて、外国語習得、言語発達、異文化理解教育について専門家を交えての研究に携わる。日本発達心理学会会員。日本子育て学会会員。ラボ・パーティは1966年「ことばがこどもの未来をつくる」をスローガンに発足し、2016年に50周年を迎えた子ども英語教育のパイオニア的存在。
 

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