旧態依然の医療とは違う複合予防施設の正体 北陸で進む挑戦が革命を起こすかもしれない

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あらゆるものをそろえておきながら、“医は仁術”という根本にある理念に背くことはできず、客層は富裕層に狙いを絞らず、お金に余裕のない人でも利用できるようにと自由診療の費用や施設利用料は東京の値段相場からすれば3分の1~半分程度。アンチエイジングのカフェなどは原価率が100%を超えてしまっているという。

「本当に身体にいいもので、なおかつ美味しいものをとこだわりすぎていたら、そうなってしまいました。全体で運営できれば何とかなるかなと思いまして……。銀行からは『すぐやめてください!』と指摘されました。でも『冗談じゃない。食事の改善なくして、病気の予防なんてできないんだ。ところで貴方は普段何を食べているんだ?』とちゃんと説明をしたら納得してもらえましたけどね。フィットネスも料金を上げたくないので今も赤字なんですよ。銀行は『そんなフィットネスなんて!』と言うんだけど、また『冗談じゃない!』その繰り返しです」

心の広い銀行の理解もあり、魚津の施設はこの10年間で徐々に業績を上げ、ようやく黒字化に成功。データも実績も作ることができた。そのノウハウをベースにして、今度は北陸の中心地、人口46万人の金沢に「浦田クリニック/スコール金沢」をオープンさせる。大きさは魚津の1.5倍。“医療”の部分では人間ドックセンターを特に充実させた。

昨年金沢に誕生した「スコール金沢」。その大きな柱となるのは医療・運動・栄養・癒やしの4つである。

具体的な指導がなければ、予防できない

最初に、徹底的に身体の状態を探る。

人間ドックでのスタンダードな検査から、脳ドック、動脈硬化判定やがんのリスク診断。果ては有機酸検査や重金属検査。遺伝子や細胞など分子レベルで身体の状態や将来のリスクを計れるバイオロジカル検査。フィットネスでの体力測定、体組成の分析など、ありとあらゆる検査を駆使。その結果によって、個人の病気や不調の原因になっているもの。数年後に起こりうる重篤な病のリスク。そして、何が必要な栄養素であり、運動であるのかが、ロジカルにわかるのだとか。

施設内の人間ドック検診センター、ロビーの様子(筆者撮影)

「通常の人間ドックや病院での検査は、病気があるかないかは教えてくれます。そして『血糖値が高いから食べ物に注意してください』『タバコはやめてください』『運動してください』とは言ってくれますが、具体的にどうやって生活習慣を変えていけばいいのかまで具体的には指導してくれない。心筋梗塞を起こした人でさえ『薬を飲んで、定期的に受診を。症状があればいつでも来てください』というぐらいで、予防のための生活方法を具体的に提案するところまで至っていませんからね。

最新の検査では、将来的な心臓病のリスクがどれぐらいあるのかもわかります。例えば心臓の冠動脈のつまり具合を、インターネット経由でアメリカに送り、5万人以上ある心筋梗塞患者のデータベースに入れて解析すると現在の冠動脈の狭窄状態から、将来的なリスクが判定される。

その進行状態によって、具体的な食事や運動、サプリメント処方など、対策の仕方が変わってきます。動脈硬化の進行を防ぐ血液クレンジング(オゾン療法)や、動脈硬化が進んでいれば点滴で血管のプラークを剥がし取る点滴キレーション療法を使うこともできる。薬を手放せない糖尿病患者だって、適切な糖質制限と運動の指導を組み合わせていければ、薬に頼らなくても血糖値はコントロールできるものなんです」

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