お父さんには自分のほかにも娘がいて、母とは別に“妻”もいるらしい。きちんと説明されるのでなく、「たまたま聞かされる形」で真実を知った涼子さんは、そのショックを表に出し、誰かに受け止めてもらうことができませんでした。そのために、じわじわとダメージを受けたようです。
当時読んだ漫画本に、涼子さんとよく似た境遇の女の子が出てきました。この子と同じように、私も“愛人の子”なのかな? 私って、いていい存在なのかな? そんな疑問も、徐々にふくらんでいきます。
学校を休みがちになったのは、中学生の頃。精神状態はもちろん、体調も悪かったため、最初は病院にあちこち連れていかれていたのですが、ちっともよくなりません。自殺未遂をしたこともありました。
「母親から『どうしちゃったの?』と聞かれて、泣きながら『もう、本当のことを言って』と言いました。『いとこのお姉ちゃんは、本当は“いとこ”じゃないんでしょ? お母さんは違うけれど、私のお姉ちゃんなんでしょ?』って」
そこでついに母親は、涼子さんに真実を話してくれたのでした。
後妻になる前提で父の家に入った母は…
涼子さんが生まれる前、母親は出版社で働いていました。父親とはそこで知り合ったのですが、このとき父の妻、つまり姉の母親は、赤ちゃんだった姉を置いて、家を出ていたそう。
母親は、父の相談にのっているうちに自分が赤ちゃんの面倒をみることを決め、「後妻になる前提」で父の家に入ります。しかし、姑とうまくいきませんでした。
そうこうするうちに、母親は涼子さんを妊娠します。父親は妻と離婚することを前提に、母に対して「産んでくれ」と頼んだそうですが、結局妻が家に戻ってきて、離婚することはできなかったのでした。
後に涼子さんが父親に聞いたところ、「(妻から)『離婚したら死ぬ』と言われたので、離婚できなくなってしまった」とのこと。母親は「お父さんがはっきりしてくれなかったから、こうなっちゃったのよ」と言ったそうですが、なるほど、間違いありません。
説明を聞いて、涼子さんが抱いてきた疑問はだいぶ解消されます。しかしそれでも、「自分は、いていい存在なのか?」という思いは消えなかったそう。
「母親は、仕事関係の男性から好意を寄せられることもあったみたいですが、付き合ったりすることは全然なくて。それを、『私が父と母の鎖になってしまっているせいじゃないか? 私がいるから、母はいつまでも父と離れられなくて、普通に結婚できなかったんじゃないかな』というふうに思っちゃったんです」
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