忘年会で「飲み過ぎる人」はやっぱり危険だ 二日酔いは身体からの重要なイエローカード

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誤解されていることが多いが、二日酔いになるのはアルコールの分解の過程で生まれるアセトアルデヒドがたまって高い濃度になっているためではない。二日酔いは、大量の飲酒に伴うさまざまな体調の変化が重なり症状として出てきたものだ。症状の出方に個人差も大きい。ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)の弱い人はそもそも二日酔いになるほどには大量に飲酒はできないのだ。

残念ながら、医学的に二日酔いを予防する薬はない。もし、そんなものが開発されていれば、酒メーカーが世の中にもっと広めているはずだ。

二日酔いは、こんな飲み方をしていると身体を潰してしまうと人間の身体が出すイエローカードと考えたほうがよい。良心ある医師ならば、二日酔い対策を研究することはない。二日酔いを抑えてしまうとその人は健康を冒されることになるからだ。

飲酒をするときの食事

それでもどうしても苦しいときには薬のお世話になることもあるだろう。頭痛なら消炎鎮痛剤(ロキソニンやボルタレンなど)ではなく、アセトアミノフェンを使うほうがよい。前者では胃症状を悪化させたり、出血させやすくしたりする可能性があるからだ。

頭痛でズキンズキンとするのが血管の拡張によるものであれば、コーヒーなどで血管を収縮させることも有効だが、胃症状があるときにはコーヒーが悪化させてしまう。このように、薬を使うときには状態を見極める必要があるのだ。

それでは飲酒をするときにはどのような食事が望ましいのだろうか? かつては、酒好きの人は食べる物も食べずに飲むことが多かったために、飲酒するときにもしっかりと食事をとるようにと勧められてきた。

しかし、現代は肥満社会である。肥満のある人が酒飲みでは肝障害による死亡率が高いことが知られている。したがって、飲酒時にも食事をとり過ぎないための注意が必要だ。果糖や砂糖は脂肪肝をもたらす。アルコールによる脂肪肝も進めやすい。甘いものや果物の食べすぎにも注意したい。

また、動物実験により高脂肪の食餌(しょくじ)では、アルコールによる肝障害が進展しやすいことが判明している。したがって、食事の中の脂肪はある程度制限し、良質のたんぱく質と適量の炭水化物をとることがオススメだ。揚げ物や油の塊は避けて、野菜をしっかりととることが飲酒時にも望ましい食事ということになる。節度ある飲み方と上手な食べ方を心がけて忘年会・新年会シーズンを乗り切ってほしい。

加藤 眞三 慶應義塾大学看護医療学部教授

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かとう しんぞう / Shinzo Kato

1956年生まれ。1980年に慶應義塾大学医学部卒業。1985年に同大学大学院医学研究科博士課程単位取得退学(医学博士)。米国マウントサイナイ医学部研究員、 東京都立広尾病院の内科医長、内視鏡科科長、慶應義塾大学医学部・内科学専任講師(消化器内科)などを経て、 2005年より現職。著書に『患者の生き方』『患者の力』(ともに春秋社)などがある。毎月、公開講座「患者学」を開催している。
 

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