車で移動できるようになったので、時給が高かった今の職場に応募した。立ち仕事ではなくなって、ノルマもないので仕事は断然に楽になった。一時期は風俗に土日全部出勤して月20万円くらい稼いだこともあったが、耐えられなくなることはたびたびだった。
「母親は家ではお金がない、苦しいとか。あなたダブルワークしているなら、もっとお金を出せとか。そんな話しかしません。本人は毎日、お菓子とかアイスとかたくさん買って悠々自適です。1年くらい前から母親が死なないかって思うようになりました。拒食症はまだ続いていて、1週間アイスしか食べないような状態。体重は25キロないと思います。だから死なないかなって。今日も帰って母親が死んでいたらラッキーだなって、そう思っています」
家では、母親と話はしない。恋人に借金をさせてからだんだんと距離ができて、母親と一切会話をすることがなくなった。しゃべることはお金のことだけ。
それから母親は、自分自身を悲観するようになった。あんなクズみたいな男と結婚したことが間違い、あんたみたいな子どもを産んだことが間違い。あんたなんて捨てればよかった。そうしたら、お母さんの人生はもっと幸せだった――みたいなことを、ひたすら吐き捨てている。
そして10日前、殺意をもって首を絞めてしまった。
母親を捨てることを決めた
「この10日間、すごく考えて、母親を捨てることにしました。銀行口座を新しく作って、家を出ます。母親は生きていけないでしょうが、もう知ったことではありません。隣の県に安いアパートを見つけて、2、3日中に契約します。家を出て、母親と断絶します。もう、一生会うつもりはないし、死んじゃっても葬式にも行きません」
ここから50キロ以上離れた隣の県に住んで、現在の職場に車で通うという。職場からは了承された。母親は地方で出稼ぎする父親が面倒をみるか、生活保護か。手取り18万円、家を出れば、性風俗のアルバイトをしなくても生活することはできる。ずっと嫌だった風俗のアルバイトからも足を洗うと決めた。
「子どもの頃から母親と共依存みたいな状態だった。時間がかかったけど、やっと目が覚めました。30歳まであと5年くらい、隣の県でひっそりと生きて、それでたぶん自殺します。もう、自分に何もないことはわかっているし、風俗なんてしてしまったので結婚とかも考えられない。だから、それでいいです。母親と絶縁するだけで幸せはないけど、苦しさはなくなります」
毒母との25年間に及ぶ、共依存と憎しみ、絶縁の決断。そして、30歳になる5年後に本当には自ら命を絶つつもりなのだろうか。自殺の話には触れずに、母親との絶縁の決断には大きくうなずいた。なんとか逃げ切ってほしい。
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