「通帳とカードを渡してくれないのは、生活費とか借金返済とか、生きていくのにすごくお金がかかるからみたいな理由を言っています。この1年くらい、ずっと母親と話し合っているけど、向こうは本当に嫌がる。車検だからとかお父さんのお金だけじゃ足りないとか、何かしら理由を言われて、このままお母さんが管理するってなるんです」
社会人になってもお金を管理されて、お小遣いをもらう。母娘との関係は子どもの頃から、何も変わらない。ずっと母親に従順に従っていたが、疑問を抱くようになった2年くらい前から母親との関係は冷めきっている。給料日だった10日前、意を決して強く「返してほしい」と言った。
「お金は生活費とか返済に使っているんだろうけど、結局、私が銀行から下ろして現金を渡しても、母親が管理しても同じ。じゃあ、通帳を返してもらって私がお金を渡せばいいよね、って話をしたとき、母親はヒステリックになって怒鳴り散らして、絶叫して拒絶した。すごく怖くて、もう、いいやと思っていたけど、いい加減この状況おかしいって。それで、10日前に『返して!』って強く言ったんです」
母親は鬼のような形相になって、絶対に渡さないと暴れだした。泣き叫んで食器や缶ジュースなどを投げつけてくる。
毒母問題だった。仕事がない地方、貧困、家庭不和などが重なって、かなり深刻な状態になっているようだ。
「殺意はあったかもしれない」
「なんかプツンってきちゃって、母親の首を絞めました。気づいたら本気で手をかけてて、母親は病弱、このままやったらすぐ死ぬんだろうなと思いながら絞めました。殺意はあったかもしれない。母親は苦しそうでした。首を絞めると顔が歪んで、こいつが死んだら、私捕まるなって。こんな人間のために刑務所に行くのは、すごくしゃくに障るって思った。で、やめたんです」
母親はせき込みながら「おまえを許さない」と絶叫して、怒り心頭に発したまま車に乗って警察に行った。警察署で娘に殺されそうになったと訴えた。警官は「逮捕しますか?」と聞いたようだ。母親は「いや、逮捕はいいです」といって、そのまま帰ってきたという。
10日前のその事件によって、母娘の関係は完全に破綻したようだ。畑中さんには愚痴を聞いてくれる友達のような存在はいないようで、その翌日に東洋経済オンラインにメールを打っている。
家庭の事情を聞く。母親は20年ほど前から重症の拒食症で、骨と皮しかない痩せ細った状態のようだ。記憶にある限り、物心がついた頃から病弱で働いている姿は見たことがない。父親はパチンコ依存症で畑中さんが中学生の頃、300万円の借金を残して蒸発した。父親の年老いた親が300万円を支払い、数カ月後に家に戻ってきたという。
地元に父親を雇用する仕事はなかった。それから父親は寮のある工場に出稼ぎに行くようになった。母娘で暮らすようになって10年以上が経っている。父親がどれくらいの金額を仕送りしているのかは、畑中さんは知らない。
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