沖縄タイムス記者が休職してまで学ぶ意味 社会部からデジタル、そして大学院へ

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――與那覇さんは現在、首都大学東京のシステム研究科に籍を置かれています。具体的にはどのような研究をされているのでしょうか。

私が所属しているのは、ネットワークデザイン研究室というところで、主にメディア創生に関する研究に取り組んでいます。メディアの立ち上げやデザイン、あるいはネットワークなどが研究テーマです。

ウェブの技術者と記者の間に、橋渡し役がいないことを実感させられたので、ここでウェブメディアの仕組みや表現を身につけ、ゆくゆくは私がその橋渡し役になれればいいなと思っています。

記事を“育てる”という視点を持つ

――こうして大学院で研究に取り組むことで、デジタルメディアの可能性を今どのように感じていますか。

いつかニュース配信にマッピングの手法を取り入れられないかと構想しています(写真:news Hack by Yahoo!ニュース)

新聞というのは、あくまで“今”を切り取るメディアです。しかし、「今日の新聞は明日の古新聞」と言われるように、それをそのままウェブに上げたところで、多くの人に読んでもらえることはまずありません。だから、過去の古い記事を、何らかの手法でよみがえらせる工夫が必要です。たとえばデザインやインターフェースを作り変えたり、見出しなどの切り口をアレンジしたり。記事を“育てる”という視点を持つことができれば、もっと読まれる記事が作れるのではないでしょうか。

個人的には、いつかニュース配信にマッピングの手法を取り入れられないかと構想しています。全国のマップ上に、各都道府県のニュースをそれぞれ配置して、情報がリアルタイムで更新されていく様子を視覚的に見せていく、という表現です。その場所にどんどん過去のニュースを蓄積していくこともできますし、デジタルはまだまだ幅広い表現の可能性を秘めていると思います。

――ただ、ウェブ記事にはどうしても、PVなどの数字に縛られる側面がありますよね。これはデジタルで記事を配信する上で、大きな枷(かせ)になるのでは?

PVをどのような視点で捉えるかが重要だと思います。新聞社の場合、紙面に掲載された情報を一度解体、選別し、加工してインターネットで配信することになりますが、PVはいわば、その品質や精度を示す指標と考えたらどうかと思います。PVの動きをつぶさにチェックすれば、それぞれの記事の特性に合わせてリリースすべき時間帯や曜日がわかります。たとえば、硬めの経済記事は平日朝の通勤時間に、柔らかめのエンタメ情報は夕方以降に、といった判断材料としてPV数を活用するのは有意義なことでしょう。

もちろん、PVがすべてではありません。ニュースは生き物ですから、編集側が「これは多くの人に読まれるだろう」と思っていても、まったくアクセスされないこともあれば、逆に期待していなかった記事がネット上で話題になることも珍しくありません。こうした傾向は、なかなか数字を追うだけでは読み切れないですよね。

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