「高3自死事件」遺族が国と面談を望んだ理由 日本バレーボール協会も異例の対応に動いた

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八田専務理事は「どちらも決して起きてはいけないこと。体罰根絶の取り組みの整備、運用はそれなりに行ってきたが、それが決定打になっていないのかもしれない」と残念そうに話す。

ふたつの案件を踏まえ、同協会では来年2月、「暴力の撲滅に向けた強化策の提案・実施を行う」(八田専務理事)緊急プロジェクトを立ち上げる予定だ。

ひとつの案としては、協会オリジナルの指導者ライセンスを整備し、暴力やパワハラに頼らない指導について、再教育の機会を作ることだ。選手のすべての年代において競技団体独自の指導者資格が存在するのは目下のところ日本サッカー協会のみで、これにバスケットボール協会が続く。

さらに、2月に開催される全国春の高校バレーボール選手権大会(春高バレー)の際に、改めて日本バレーボール協会として、暴力とパワーハラスメントの根絶を宣言。啓もうのための策を考えていくという。

バレーボールの暴力案件が連続したとはいえ、当該の協会および連盟の実務的なトップポジションにあたる専務理事が被害に遭った選手の家族と面会するケースは異例のことだ。

桜宮事件では協会は動かなかった

2012年12月に大阪の市立桜宮高校のバスケットボール部員(当時2年)が顧問による暴力やパワハラを苦に自殺。それを機にスポーツ界と全国高等学校体育連盟および日本中学校体育連盟は2013年に暴力行為根絶宣言をした。バレーボール協会も当時、会長名で「暴力行為には体罰のような肉体的な暴力だけではなく、暴言・脅迫・威圧・侮辱といった相手を精神的に傷つける行為も含まれる」とメッセージを発表している。

部員の自死はそのくらい重大な事件だったが、亡くなった部員の遺族が協会に面会を求めても当時の日本バスケットボール協会は応じていない。国際バスケットボール連盟(FIBA)から2リーグ制や組織の改変を求められ混乱の真っただ中にあったためともいえるが、そもそも責任の所在があいまいだった。

中高の運動部に所属する生徒は、当該競技の協会・連盟に登録しながら、中体連や高体連にも所属する。学校内の活動なので、教育委員会も関わってくる。一見、多くの機関に守られているように映るが、実は顧問の指導や運営の問題の有無をチェックできるのは学校のみだ。

匿名を条件に取材に応じてくれた岩手県のバレーボール指導者の男性は、翼さんの死を知ったとき、別の指導者らと「やっぱり、また、やらかしたか」と話したそうだ。顧問が、盛岡一高で暴力事件を起こし裁判中であることを知っていたからだ。

「不来方の監督はチームを指導するような資質のある人間ではなかった。負けると、生徒を体育館の隅に集合させ、ずっとミスした子を罵倒していた。常に怖い顔をして、ただ、ただ、生徒を責めるだけ。そんなところを見ても学校は見て見ぬふりをしていたのか。そういう態度を間違っていると感じなかったのか」と男性指導者は疑問を呈する。

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