笑ってさよなら、ロマンスカー「LSE」最後の日 お別れムードと思いきや車内はお祭りだった

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車窓の見どころとともに「次の駅で駅乗務員たちが横断幕を持って立っています」というアナウンスがあった。それを撮っていたら、「進行方向左側で地元の園児たちが手を振っています」という案内も。右に左にと忙しい。

園児たちは小さい手を振りながら、口をパクパクさせていた。おそらく「ありがとう」と言っていたと思うが、園児たちの年齢を考えると、大変ほほ笑ましい。私も思い切り手を振り返した。

海老名検車区で小田急社員たちが横断幕を持って手を振っていた(筆者撮影)

取材陣だけでなく、ツアー参加者たちも座席に座ったきりの人はほぼいない。最後の思い出に、と撮影をしている人が大半だが、10年前に一緒に撮った写真を運転士さんにプレゼントする人や、お世話になった乗務員さんに感謝の気持ちを伝える人も。

また、勤務する車掌だけでなく、この日は大勢の社員が乗って抽選会の手伝いや案内をしていた。彼らも自ら手作りの運行表を作ってきたり、思い出の写真を見せたりなど、車内の至る所で乗客と乗務員が歓談している様子が見られた。

車内で最後の思い出作り

途中、このツアーの車掌を担当した海老名車掌区の松村信輝さんに話を聞くことができた。

松村さんは小学生時に初めて乗車した列車がLSE、そして小田急電鉄に就職してから乗務実習で初めて乗車したのもこのLSEだったという。

「ラストランで乗務する車掌や運転士について、もめることはなかったのですか?」と質問したが、まったくそんなことはなく、快く送り出してもらえたそうだ。

車内販売の制服。左から、ORS(小田急レストランシステム)2代目、日東紅茶、ORS現在(筆者撮影)
左から、ORS(初代)、ORS(1つ前)、森永エンゼル(筆者撮影)

車内では記念乗車証の配布や、車内販売も行われていた。LSE引退記念グッズの中でも、LSEラストランのピンバッジはここでしか買えないと言われ、私も慌てて買った。

そして今回、個人的に楽しみにしていたのは車内販売の方たちの制服だ。昔の制服を着用するということで、全6種の制服の写真をそれぞれ撮らせてもらった。

私は制服を着用する仕事をしたことがなかったので、レストランなどのかわいい制服にはいまだに憧れがある。「運転士体験」はたまに聞くが、「車内販売体験」があったらぜひ一度やってみたい。

ラストランのLSEは小田原駅の7番引込線に入った。秦野駅まで行くのだが、ここで1時間ほど停車する。もちろん外には出られない。

その間、先ほど抽選に当選した方たちの思い出話を交えた車内放送が始まり、揺れない車内での写真を今のうちに、と撮影する人たちの姿が目立った。

次ページ終着の秦野駅でお別れ
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