「会社でうまく働けなかったことで
『僕はまともな道は歩いていけないんだ』
って自覚しました」
保険会社の社員の時代、福岡吉本が主催するお笑いオーディション番組を2回受けに行った。ヒロシさんは1回戦で落ちてしまった。結果発表の後、福岡吉本の社長がホワイトボードに電話番号を書いた後、
「本気でお笑いをやりたいと思ってる人はここに電話をかけたらいい」
と皆に言った。ヒロシさんは後日電話をかけて
「お笑いをやりたいです」
とはっきり告げた。
それからしばらく福岡吉本でお笑いを続けたが、26歳の時に上京した。
冴えない芸人のウソを信じてホストの世界へ
そして東京で出会った冴えない芸人が、やたらとブランドもののアクセサリーを身に着けていたのが目についた。恋人もいるという。冴えない男なのになぜ?と思って問い詰めた。
「そいつは『誰にも言わないでね。実はホストやってるんだ』って言ったんです。こいつがいけるんだったら僕もいけるんじゃないか?って思いました。芸人やりながらアルバイト感覚で働けるんなら丁度いいなって考えました」
ただ実はその男性はウソをついていた。持っていたブランドもののアクセサリーもニセモノだった。
ヒロシさんが面接に連れていけと言っても、なかなか紹介してくれない。もちろんウソなのだから紹介できるはずもない。
ヒロシさんはしびれを切らして、知り合いのツテをたどって自分でホストクラブに面接に行った。簡単に入店することができた。
「入るのは簡単でしたけど、辞められなくなりました。拘束されて働かされて、月3万円しかもらえませんでした」
飲めない酒をたくさん飲まされ、毎日長時間働かされた。あまりにお金がないので、休日はコンビニでアルバイトをした。週に1度しかコンビニでアルバイトしていないのに、週6日働いているホストクラブより多く給料をもらった。
逃げたいと思ったが、逃げてしまってはもう二度とお笑いはできなくなると思った。だから歯を食いしばって耐えたが、4年目にどうしても耐えきれず逃げた。そして熊本に帰った。
「その時はお笑いをあきらめました。もう東京に戻れないですから。でも逃げた後すぐにお店が潰れたって聞きました。最初は僕を連れ戻すためのわなかと思って警戒しましたけど、本当に潰れたことが判明しました。慌てて東京に帰りました」
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