太陽電池バブル崩壊、日本勢に復権の好機か

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 太陽電池産業でいま異変が起きている。

「台湾や中国では、太陽電池市場への新規参入の中止が多発している」

そう語るのは、日本の太陽電池製造装置メーカー役員。「半導体や液晶関連が不振なだけに、台湾や中国の企業は一斉に太陽電池へ参入するはずだったが……」と続ける。

参入意欲が減退

台湾では、半導体産業が深刻な不況に直面している。DRAM価格は11月からわずか1カ月間で半分に下落。需要回復を見込み、各社が増設した液晶パネルも計画の半分程度しか売れていない。「いま台湾企業には資金がない。金融機関も危機的状況のため、資金調達もできない」(台湾首位のDRAMメーカー、力晶半導体の黄崇仁会長)。深刻な資金不足が、台湾では成長期待のある太陽電池市場への参入意欲を冷え込ませている。

一方の中国では、太陽電池の材料産業が危機に瀕している。中国は太陽電池の原料である珪石の産地。近年は金属シリコン、多結晶シリコンといった材料企業が急増している。主要材料である多結晶シリコンでは、稼働済みを含め40もの新規生産計画がある。

だが、多結晶シリコンのスポット価格は11月に半分に急落した。そもそも秋冬は、太陽電池材料の不需要期。さらに太陽電池の一大市場であるスペインで、政府が太陽光発電の高値買い取り(フィード・イン・タリフ)制度を改定したことも影響した。同国は、9月29日以降の設置・稼働分の電力会社の買い取り価格を従来比25~30%引き下げ、太陽電池需要に先行き不安を抱かせた。

中国では供給過剰の懸念も高まっている。SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は、早ければ2009年に、遅くとも10年には供給過剰になると予測。SEMIチャイナのリリー・フェン氏も「回復の見通しは立たない」と嘆く。「大手はともかく、中小の多結晶シリコン企業は厳しい状況となる」(同氏)。太陽電池需要の先行き不安に加え、材料メーカー淘汰による安定調達への懸念……。セルメーカーにとって二つの不透明感が重なり、中国でも太陽電池への新規参入中止が相次いでいる。

こうした台湾や中国の“ソーラー・バブル崩壊”をよそに、捲土重来を期すのが日の丸ソーラー勢だ。もともと太陽電池は日本のお家芸。海外の新興企業にシェアを奪われたが、「本当の勝負はこれから」(濱野稔重・シャープ副社長)。シャープは10年3月までに大阪・堺工場を、さらに10年中ごろにはイタリアの電力会社エネル等との合弁工場を稼働させる。台湾勢、中国勢の失速が、日本勢復権の好機となるか。

(石井洋平、二階堂遼馬 写真:尾形文繁=週刊東洋経済)

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