北朝鮮はなぜ「戦略兵器」の実験を行ったのか 米韓海兵隊の合同訓練が神経を逆なで
北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)は11月16日、金正恩朝鮮労働党委員長が「新開発の最新鋭戦略兵器」の実験を視察したと伝えた。正恩氏が兵器実験を視察するのは今年初めて。
正恩氏は今年に入ってから韓国やアメリカとかつてない規模で外交を繰り広げており、兵器開発についても控えめなトーンを守ってきた。アメリカのドナルド・トランプ大統領との無用な対立を避けるためだろう。トランプ大統領はシンガポールで行われた6月の米朝首脳会談で、北朝鮮がミサイル・核実験を停止したことを繰り返し持ち上げている。その意味で、正恩氏が今年初めて兵器実験を視察したとされる今回の発表は目を引く。
写真が1枚しかないのは奇妙
だが、奇妙な点も多い。まず、KCNAが流した写真は1枚しかない。海沿いで撮影されたと思われる写真のなかで、正恩氏は制服を着た軍人の一団に話しかけている。実験が行われたとされる兵器は、まったく写っていない。
写真が1枚しかないのは異例だ。北朝鮮の国営メディアでは通常、最高指導者による視察は何枚もの写真付きで報じられる。写真に付けられた説明も、曖昧すぎて何の役にも立たない。新兵器の「新鋭」ぶりを自慢しているだけで、いったいどんな兵器なのかの説明が一切ないからだ。
KCNAによれば、正恩氏は「たいへん満足した様子で、こう述べた。実験の成功は、防衛技術に力を入れてきた朝鮮労働党の政策が正しいことをはっきりと立証するものである。わが国の防衛能力は急速に進化しており、朝鮮人民軍の攻撃能力も大幅に強化された」。
実験や写真撮影の日時が明らかにされていない点にも注意が必要だ。KCNAが情報を流したのは16日だが、実験自体はもっと前に行われていた可能性が高い。今年に入ってから、どこかの段階で行われた実験視察の様子を、このタイミングで流すことにしただけだろう。
つまり、今回の兵器実験のポイントは、実験が行われたのかどうかさえわからない兵器にあるのではない。それよりも、北朝鮮を取り巻く外交的な動きとの関連に注目すべきだ。